古い自民党に先祖返り。2013年度税制改正大綱に見るアベノミクスの真実
政府は1月29日、2013年度税制改正大綱を閣議決定した。税制改正大綱は、国会で審議される税制改正法案の基礎となるもので、これに先立つ24日、与党が最終合意した税制改正大綱に基づいた内容となっている。
税制の話は地味だが、徴税という国家の根幹に関わる分野であるため、決してウソをつかない。税制改正大綱を見れば、その時の政権がどのような方向を向いているのかが如実に分かるのだ。
今回の税制改正大綱は、古い自民党体質に逆戻りした安倍政権の本質をよく表している。税制改正大綱は大きく分けて、景気対策に関する項目と消費税対策に関する項目の2種類で構成されている。
このうち景気対策に関する項目には、生産設備の増強や給与増額に対して減税を行う措置が盛り込まれている。
また中小企業の交際費の枠の拡大、事業継承の要件緩和などの項目もある。
特に大きいのが生産設備増強に対する支援で、既存産業の支援に重点が置かれていることが分かる。つまり旧来型の製造業を支援しようというスタンスであり、新しい産業を育成することには力点が置かれていないのだ。また交際費枠の拡大も、時代に逆行した措置といえるだろう。
消費税対策としては、所得税と相続税の増税を柱とし、庶民との不公平感をなくすことを強調している。だが肝心の中身はというと、所得税については課税対象となる4000万円超の所得に45%の最高税率を設けるというもので、この対象となる国民は実はほとんど存在しない。一方相続税は最高税率を55%にしたうえで、基礎控除を 5000万円から3000万円に引き下げるというもので、財務省の意向を反映し、将来の相続税大増税の布石とする内容になっている。
消費税対策の本丸は自動車2税の見直しである。自動車取得税は基本的に廃止、重量税については、見直しを行うこととし2014年度税制改正で具体的な結論を得るとしている。さらに党の税制改正大綱では重要税について「道路の維持管理・更新等のための財源として位置づけ」ると明記され、事実上、道路特定財源を復活させた。これは道路族議員と自動車メーカーの強い意向を反映したものだ。
以上をまとめると、安倍政権のスタンスは、製造業を中心とした既存産業を保護し、道路建設を軸にした公共事業を復活させ、将来は相続税を大幅に増税するということになる。
もっとも、安倍政権としてはあまり選択の余地がなかったのも事実である。20年間、構造改革を拒否し続けてきた日本は産業基盤がボロボロになっており、もはや既存産業を保護することくらいしかできな状態まで追い込まれている。また過去の無計画な公共事業のツケが回り、現存する道路や橋の維持だけでも、莫大な費用がかかる状態だ。
安倍政権の提示した税制大綱は、後戻りができないところまで追い込まれた日本経済の姿そのものといえる。
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