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原子力規制委員会がまとめた原発の新安全基準骨子は、迷走する原発政策の象徴

 

 原子力規制委員会は1月31日、内部に設置した有識者会合において、原発の安全性に対する新しい基準の骨子をまとめた。新基準には、原子炉の安全設計に関して定めた「原子炉の新安全基準」と地震・津波対策について定めた「地震・津波に関わる新安全基準」の2つがある。

 原子炉の新安全基準では、原子炉の冷却設備や第2制御室を備えた「特定安全施設」の設置、緊急時対策所の設置、格納容器内の圧力を下げるためのフィルター付きベントの設置などを求めている。
 また、地震・津波に関わる新安全基準では、活断層がない地盤への設置、津波に対する安全確保、想定を超える災害に対する対処、などが盛り込まれた。

 これまでの基準に比べると内容は大幅に厳しくなっており、とりあえずは安全性対策は強化されたということになる。だが新しい規制は、既設の原発も対象となり、基準に適合させないと原発は再稼働できない。
 もしこの骨子がそのまま採用されれば、多くの原発が再稼動できなくなるため、原発によっては設置の猶予期間を設け、設置されていなくても再稼働が認められるようにする方針だ。

 規制委員会が提示した方針に対しては、原発反対、推進派の両方から批判の声が上がっている。推進派は規制でがんじがらめで事実上原発を廃止するたの規制だと主張している。一方の反対派は逆に、原発再稼動の言い訳にするためのずさんな基準であるとしており、両者の主張は真っ向から対立している。だがどちらの見解が正しいのか議論することはあまり意味はない。

 このようなことが起こる背景には、政治の「逃げ」があるからだ。安倍首相は原発の安全性について「規制委の専門的判断に委ねる」として判断を完全に丸投げしている。
 だが専門家は専門的な見地から見解を述べることが仕事であり、意思決定を行うことはできないし、そもそもするべきではない。科学的見解というのは、前提条件などを変えればいくらでも結果は変わってくるものであり、最終的な決断は国民の代表者である政治家以外にはできるはずがないのだ。

 決断までも専門家に負わせれば、責任回避をしたい専門家はひたすら基準を厳しくするだろうし、原発事業者と関係の深い専門家は安全だと繰り返すだけだろう。規制委員会が提示した今回の骨子についても、稼動と停止の間で右往左往しているだけのことである。

 科学的にリスクをゼロにすることはできない。多少のリスクを負っても経済を優先するのか、わずかなリスクであっても許容すべきでないのか、細かい数字はともかく、決めなければならないことは単純だ。「技術のことはよく分からない」というのは無責任な言い訳でしかない。

 - 政治, IT・科学

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