ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

金融機関が金利上昇に備えを開始。だが水面下ではもっと深刻な事態が進行中

 

 アベノミクスによる円安が進展したことで、金利上昇の可能性が現実化してきた。実際長期国債の利回りは安倍政権のスタート以降、じわじわと上昇している。

 銀行や生保などの金融機関が金利上昇リスクに備え始めたと2月4日の日本経済新聞が報じている。
 銀行や生保が保有する国債の価格は金利が上昇すると下落するが、その下落分は損失として計上しなければならない。金融機関はその対策を講じ始めているというものである。

 銀行は価格下落の影響が少ない短期債への乗り換えを進め、一方生保は会計上の特例措置を使って時価評価をしなくてもよい簿価評価区分に切り替えを進めているという。

 ここ1~2年の間、金利上昇に伴うリスクを警戒する記事がマスコミに掲載されることが多くなっているが、背後には消費税の増税と財政再建を急ぎたい財務省の意向が強く働いているといわれている。この記事がそれに該当するのかどうかは定かではないが、少々奇妙な記事ではある。

 まず銀行と生保では金利上昇による影響が大きく異なっている。銀行は負債よりも資産の方が運用期間が長期になる(負債に相当する顧客からの預金は要望があればすぐに返さなければならないから)。長期で運用するものほど金利上昇時の価格下落が大きくなるので、銀行は金利が下落すると損失が拡大する。このため短期債に乗り換えることには意味がある。
 一方生保は、資産よりも負債の方が運用期間が長期になる(生命保険が支払われるのは顧客が死亡してから)。このため、金利が上昇するとむしろ経営上有利になる面がある。

 もっとも日本の生保は負債側は時価評価しておらず、資産側だけを時価評価すると一方的に損をする可能性があり、その意味で資産の一部を簿価評価に移すことには一定の意味はある。だが基本的に生保は金利上昇に対してそれほど敏感になる必要はないというのが実情だ。
 また銀行の運用期間の短縮はかなり以前から進められており、最近始まったことではない。以上から考えると、金融機関が金利上昇に備え始めたというのは、必ずしも現状を反映したものではないことが分かる。

 金融機関の国債運用については、実はもっと深刻な問題がある。今後、長期国債を購入する主体がいなくなってしまう可能性が高くなっているのだ。銀行は継続的な金利上昇やインフレが見込まれれば、今後は長期債の購入をさらに控えてくるだろう。
 残るは生保だけが頼りとなるが、日本は人口減少と高齢化が進み、高齢者の保険加入が増加する可能性が高い。そうなると、生保の負債側の運用期間が短縮してくるため、長期債の保有を避けるようになってくる。機関投資家の誰もが長期債を購入しなくなってしまうのだ。

 長期債を購入する主体がいなくなると、ますます長期金利が上昇し、最終的には国債の信用そのものが危ぶまれてくる。金利上昇で金融機関が危ないというのは短期的、表面的な現象に過ぎない。水面下ではもっと深刻な事態がじわじわと進行中なのである。

 - 経済

  関連記事

indochina
中印が経済的理由から急接近。インド側の狙いは日本と中国が「競争」すること

 中国の習近平国家主席は2014年9月17日、インドを公式訪問し、モディ首相と会 …

shanhai
日本企業の4社に1社が海外に現地法人を設立。輸出の時代は完全に終わった

 経済産業省は26日、2012年企業活動調査速報を発表した。この中で、日本の製造 …

sangyoukyousouryoku
残業代ゼロ政策の議論が復活。今度は一般社員への適用も検討?

 労働時間に関わらず賃金を一定にするホワイトカラーエグゼンプションが、再び議論の …

usakoyoutoukei201606
米雇用統計はポジティブサプライズ。米株は意外にしぶとい可能性も

 米労働省は2016年7月8日、6月の雇用統計を発表した。代表的な指標である非農 …

caterpilar
米キャタピラーの決算を見る限り、世界経済減速の米国への影響は限定的

 米建設機械大手のキャタピラーは2014年10月23日、2014年7~9月期の決 …

kawase201301
JPモルガンの佐々木氏がとうとう見通しを変更。今回の円安転換はホンモノかもしれない。

 為替市場において円安がさらに加速しそうな勢いだ。安倍首相による日銀に対する緩和 …

aikoukoku
広告クリエイティブ業務のAI化で、すべての広告は動的になる

 広告業界でコピーライティング業務をAI化する取り組みが進んでいる。狙いは人員の …

watsonibm
人工知能の本格普及が始まる兆し。これからの時代、知的職業はどう変わるのか?

  米IBMは2014年10月8日、同社の人工知能「ワトソン」を本格普及させるた …

bouekitoukei201306
6月の貿易収支は円安効果で赤字縮小。だが産業構造の変化で数量減少は止まらず

 財務省は7月24日、6月の貿易統計を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易 …

hosino
星野リゾートなど新規REITが続々登場。日本経済の救世主となるか?

 全国にリゾートホテルや旅館を手掛ける星野リゾートが、不動産投資信託(REIT) …