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麻生財務相が高橋是清の政策をモデルにと言及。その後の展開を知っての発言なのか?

 

 麻生財務相は2月3日、NHKの番組に出演し、デフレ対策として戦前の政治家である高橋是清の政策を引き合いに出し「歴史に学ぶ以外に方法はない」と強調した。大胆な金融緩和と財政出動を組み合わせ、昭和恐慌のデフレから脱却した高橋是清の方法をモデルに経済政策を進めていくという。

 確かに麻生財相は、高橋是清の姿と重なる部分が多い。首相経験者が財務(大蔵)大臣に就任したのは、高橋是清と戦後では宮沢喜一元首相だけである。
 また、高橋是清が実施したのは、日銀の直接引き受けによる大胆な財政出動と金の再輸出禁止策の組み合わせであった。現代にあてはめれば、日銀引き受けによる大規模な公共事業と量的緩和策ということになり、まさにアベノミクスの政策そのものである。

 確かに、高橋是清の思い切った政策により、昭和恐慌で苦しんでいた日本経済は見事に復活した。麻生財相がインタビューで明らかにしたのはここまでである。だがこの話には続きがある。
 高橋財政によって景気は回復し、好景気を謳歌したのもつかの間、日本は日中戦争という泥沼にはまってしまった。さらに一度拡大した財政を縮小することは難しく、日中戦争の戦費調達もあって、日銀がさらに紙幣を増刷するという悪循環に陥ってしまったのである。

 高橋是清は一度拡大した財政を縮小することが非常に難しいことを予測はしていたが、自身の政治的リーダーシップで解決できると踏んでいたフシがある。だが財政拡大で肥大化した日本の官僚組織は政治家のいうことなど聴くはずがない。高橋は、無軌道な軍事予算の拡大に体を張って抵抗したが、結局2.26事件で暗殺されてしまったのである。

 高橋の没後、日本はまさにタガがはずれた状態になった。日本を待ち受けていたのは猛烈な悪性インフレであり、万策尽きた日本は狂気の日米開戦に踏み切ってしまう。後はご存知の通りである。
 つまり高橋財政とは、昭和恐慌から日本を救った画期的な政策であると同時に、際限ない財政拡大とインフレ、そして日米開戦のきっかけになった政策でもあるのだ。しかも中国問題がこじれていて、日米の友好関係が疑問視され始めるなど、恐ろしいほど、当時の状況と今は酷似している(日中戦争がなければ日米開戦はなかった可能性が高い。尖閣問題は日米同盟を危険にさらす可能性がある)。

 麻生財相が、高橋是清のその後についてどの程度知っているのかは定かではない。だが高橋財政の結果、猛烈なインフレ、日中関係の悪化、最終的には日米関係の悪化というかつてのシナリオを知った上での発言であれば、麻生氏の見解はあまりにも楽観過ぎるとはいえないだろうか?

 - 政治, 経済

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