無罪を確信していた内柴被告。下半身の行動とは正反対のあきれたナイーブさ
東京地裁は1日、酒に酔った10代の女子柔道部員に性的暴行をしたとして準強姦(ごうかん)罪に問われた柔道66キロ級の金メダリスト、内柴正人被告に対し、懲役5年の実刑判決を言い渡した。内柴被告は即日控訴した。
内柴被告は、公判では一貫して「合意の上だった」と無罪を主張していた。
だが裁判長は「女性に誘われた」とする内柴被告の説明を「被害者が当時酔いつぶれていたことを利用しての虚言」と断定、「被告人の供述は全く信用することができない」として内柴被告の主張を全面的に退けた。
内柴被告は無罪を確信していたといわれており、入廷時にはうっすらと笑みまで浮かべていた。
だが判決が言い渡されると力なくイスに腰掛け手で顔を覆い、控訴手続きについて説明する裁判長の声を遮り、「控訴をさせてもらいます」と大声を出したといわれている。相当狼狽していたことが伺える。
日本人は司法判断というものを神のお告げでもあるかのように絶対視する傾向がある。頭が筋肉の内柴被告にはおそらく強姦したという意識はなく、法は自分を守ってくれると心から信じていたのだろう。
だが現実の裁判はそのような甘い世界ではない。司法権という一つの国家権力を行使するのが裁判であり、しかも日本は法の支配が十分に確立されていない未熟な国家である。
内柴被告と被害者が本当に合意の上だったとしても、日本の司法制度のもとでは、内柴被告に無罪判決が出る可能性はかなり低いというのが現実なのだ。しかも今回のケースでは、内柴被告が露骨に隠蔽工作をするなど、誰が見てもクロと思わせる行動を取っており、無罪を勝ち取れる確率などゼロに近い。
弁護士が内柴被告に日本の司法の実態を説明していないのか、明確な物的証拠が揃わないと有罪にはできない米国のような世界を、内柴被告がナイーブにも信じていたのかのどちらかであろう。
同じような傾向はホリエモン裁判でも見られた。ホリエモンは今でこそ、逮捕されてしまったらすべてが終わりで、推定無罪の原則など成立しないという日本の司法の実態を嫌という程、知らされたであろう。だが逮捕前は、法律で明確に禁止されていなければ、裁判で有罪になることはないと本気で信じていたフシがある。ホリエモンも昔はナイーブだったのだ。
被告人がシロであれクロであれ、一旦逮捕されてしまえば無罪になる可能性はゼロに近いというのが日本の現実の姿である。もちろんこのような状況は改善していくべきものである。だが法による裁きとは権力の行使そのものであり、形を変えた暴力の行使であることを忘れてはならない。
ナイーブにも法が自分を守ってくれるなどと考えているようでは、法の適切な執行など望むべくもない。内柴被告のような倫理観のカケラもない人物ですら、少年少女のような純粋さで法が自分を守ってくれると考えている。この現実は極めて重い。法の支配とは与えられるものではなく、戦って勝ち取っていくものという感覚は日本人にはほど遠いもののようだ。
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