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日本ではなぜ借金の個人保証がなくならないのか?

 

 民法の抜本改正を検討している法制審議会(法務大臣の諮問機関)が、中小企業融資における個人保証を見直す方向で検討に入ったと毎日新聞が報じている。

 日本は、個人保証が当たり前の社会である。中小零細企業が金融機関から資金を借り入れる場合には当たり前のように個人保証を求められる。住宅ローンについても住宅を取り上げられてもまだ残りの借金を個人が返済しなければならない。
 このような制度によって中小零細企業の資金調達が容易になる反面、事業が破綻すると保証人となった人が自己破産やひいては自殺に追い込まれるという問題を生み出してきた。法制審議会では、原則個人保証を無効とする改正案が検討されており、長年の慣行が見直される可能性が出てきたという。

 だが詳しい内容を見てみると、実態はまったく異なっているようだ。個人保証は原則禁止にするとはいっても、経営者本人が会社の債務を保証する「経営者保証」は例外として認める方針だという。個人保証のうちのほとんどが経営者保証なので、これでは実質的には何も変わらない。第三者を無理やり保証人にするという悪質なケースがなくなるだけだ。また、住宅ローンで求められている個人保証についても、継続して認める方針だという。
 経営者に対する融資と住宅ローンが融資のほとんどを占めていることを考えると、むしろこの改正案は個人保証の制度をなくすつもりがないことをあらためて宣言しているに過ぎないことが分かる。

 米国では借り手保護が徹底しており、住宅ローンを返済できなくなっても、家を手放せばすべてチャラになり、個人が最後の最後まで借金を背負う必要はない。また事業に対する融資も、個人保証を付けるものもあるが、基本的には金融機関が審査を行い、個人ではなく事業に対して融資するケースが多い。

 では日本ではなぜ個人に対してそこまで借金を負わせる仕組みになっているのだろうか?それは日本人が競争社会を望まないからである。

 もし個人保証を全面的に禁止すれば、金融機関は融資の基準を厳しくすることになり、中途半端な事業には融資しなくなる。また住宅ローンについても、よほどしっかりした物件でなければ、ローンを下ろさなくなる。実際米国では、質の悪い住宅にはローンの借り手の信用状況に関わりなく融資は下りない。
 そうなってしまうと、能力のない事業者は次々と淘汰され、しっかりした事業体ばかりが残ることになる。それはよいことではあるのだが、しっかりとした事業体は無駄な雇用などを維持するはずもなく、能力のない経営者や従業員は容赦なく切り捨てられていく。米国では従業員は家族同然などというカルチャーは当たり前だが微塵もない。

 米国は究極の格差社会といわれるが、一方でそれは消費者保護を徹底した結果でもある。これに対して経営者やローンの借り手に全責任を負わせれば、ムダも多いが、余分な雇用も維持され、情としがらみによって仕事が維持される労働者も増えることになる。

 要するに、皆、借金でがんじがらめだが、弱肉強食ではない情としがらみが優先するユルユルの社会がいいのか、消費者保護は徹底しているが、高い能力を持った人でなければ簡単に切り捨てられてしまう格差社会のどちらを選ぶのかという選択なのだ。
 これまで日本では借金地獄の方を選んできたということは、ドライな競争を望んでいないということの裏返しでもある。そしてそれはこれからも続きそうである。

 - 社会, 経済

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