ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

ドイツ連銀が国外に保管している金塊の一部を国内に移送するワケ

 

 ドイツ連邦銀行は、米国とフランスに保管している金塊の一部をドイツに戻し、金保有のバランスを見直す(写真はドイツ連銀に保管されている金)。

 ドイツ連銀の金準備は3400トンと米国次いで世界2番目の水準となっている。だが金の98%は国外に保管されており、国外保有の金が適切に管理されていないと批判を受けていた。
 ドイツ連銀では国外に偏った金保有のバランスの見直しを開始しており、すでにイングランド銀行(英国の中央銀行)に保管されていた金900トンを国内に戻している。

 英国保管の金に加えて、米国とフランスにある金を国内に戻すことで、最終的には50%の金をドイツ国内で保管する。具体的な金輸送の詳細は明らかにしていないが、2020年までの間に、ニューヨークからフランクフルトに300トン、またパリからフランクフルトに374トンを段階的に輸送するという。
 最終的に、ドイツ国内は1036トンから1710トン(約50%)に、ニューヨークは1536トンから1236トン(約37%)に、パリは374トンからゼロに、英国は450トン(約13%)のままということになる。

 今回ドイツが金保有のバランスを見直すのは国内の政治情勢への対応が大きい。ドイツが金を国外保管したのは東西冷戦に備えるためといわれてきたが、それは表向きの理由にすぎない。実際には、圧倒的な経済力を背景にしたドイツの貿易黒字のいわば「人質」として、国外に金を拠出させられたという側面が強い。そこには敗戦国としての立場の弱さが反映されている(本誌記事「ドイツでNY連銀に保管されている金塊について疑念の声が高まる」参照)。

 現在ドイツはユーロの盟主であり、経済だけでなく政治的にも欧州全体を支える立場になっている。ドイツ国内では、ギリシャやスペインの救済でドイツは負担ばかりさせられているという雰囲気が強い。金の国内保有はドイツの国際的地位が極めて高くなったことに加え、国内世論にメルケル政権が配慮した結果と考えられる。

 ちなみに、これまで金を保管してきた米国や英国は、金については徹底的な秘密主義を貫いている。日本が保有するほぼすべての金塊もニューヨーク連銀が保管しているが、具体的にどこにどのような形で保管されているのか米国は明かしていない。このことが、「実際には金は存在しないのではないか?」という陰謀論を引き起こす原因にもなっている。

 ドイツ政府が、米国や英国に対して金の保管状況を説明させることができ、一部は自国に移送できるという事実は、ドイツの政治的立場が非常に高くなっていることを象徴しているといえるだろう。

 - 政治, 経済

  関連記事

cameron2
英議会がシリア軍事介入を否決。介入に消極的なオバマ大統領には追い風だが

 シリアへの軍事介入をめぐる状況に変化が生じ始めている。これまでは、英仏が介入を …

abekeizai201311
政府税調が法人税改革の原案を提示。減税先行で財政再建が遅れる可能性も

 政府税制調査会は2014年5月16日、法人税課税の専門委員会において法人税改革 …

haken
まとまりつつある派遣制度改正の具体案。背景には派遣会社と労働組合の事情?

 労働者派遣制度の改正に向けた具体的な動きが出てきた。これまで特定業種以外では3 …

eigokyoiku
バイリンガル国家マレーシアにおける最大の課題は何と英語力不足

 バイリンガル国家として知られるマレーシアにおいて、理数系科目の授業を英語で行う …

tosho05
年金運用の株式シフトが急加速。すでに買い出動を始めている可能性も

 公的年金の運用における株式シフトが一気に進みそうな状況となっている。背景には足 …

businessman02
2016年1~3月期GDPはプラス転換だが、うるう年効果が大きく実質ゼロ成長

 内閣府は2016年4月18日、2016年1~3月期のGDP(国内総生産)速報値 …

nichigin
資金循環統計を見れば、アベノミクスでお金がどう動いたのかが分かる

 日銀は2014年3月25日、2013年10~12月期の資金循環統計を発表した。 …

softbankson02
ソフトバンク後継者のアローラ氏が私財を投じて同社株600億円分取得へ

 ソフトバンクグループは2015年8月19日、孫正義社長の後継者であるニケシュ・ …

androidTV
グーグルが着々と進める家電のネットワーク化と人工知能化

 ネット検索最大手の米グーグルが、家電の人工知能化を急ピッチで進めている。同社が …

kanntei
政府、財界、労組による賃上げ協定構想が浮上。だが内容は賃下げを狙ったものだ

 労働者の賃上げが実現できるように、政府、経済界、労働組合の3者で協定を結ぶ構想 …