安倍首相が訪米を前にTPP参加を決断?。正式な表明は参院選前との説も
安倍首相は、21日の訪米を前にTPP(環太平洋経済連携協定)に参加を表明する意向を固めた。20日午後の参院予算委員会では、TPP問題について「夏の参院選の以前に結論を出せるのではないか」との見通しを示している。
TPPについては、交渉の実務を担当する官僚レベルではすでに参加することを前提に作業が進められている。だが先の衆院選において自民党は「聖域なしが前提のTPP交渉には参加しない」という公約で政権を獲得しており、TPP参加を表明することは公約違反と指摘されるリスクがあった。また自民党の支持母体には、農業団体などTPP参加に強固に反対しているグループも多く、党内調整も難しい。
それでも安倍首相がTPP参加を決めたのは、実務レベルでの期限が迫っているからである。TPPの交渉に臨む各国政府は年内での交渉妥結を目指している。一方、今年のTPP交渉の会議は3月、5月、9月に開催が予定されている。今のタイミングで参加を表明し、5月の交渉で実務をスタートさせないと、日本は実質的に交渉に参加できなくなる。2月はギリギリのタイミングというわけだ。
21日からの訪米では、日本側は米国に対してTPP参加を表明すると思われる。だがそれが公式なものになるかは微妙なところである。水面下では、日本側のメンツを立ててもらえるよう、米国に「お願い」しているからだ。
安倍首相は、オバマ大統領との首脳会談において「聖域があるのかないのか、自身で確認したい」としており、直接オバマ大統領に直接確かめる意向を示している。多国間交渉であるTPPの原則をオバマ大統領に尋ねるというのもおかしな話だが、首相としては「聖域あり」という言質を、実質的なボスであるオバマ大統領から取りたいところだ。
そこまでうまくいかなくても、日米首脳会談では(聖域を設けてもいいという)オバマ大統領の意向が確認できたととして、帰国後、党内調整を経て正式な表明を行うというのがもっとも可能性が高いシナリオだ。
今のところ、円安と株高が続き、安倍政権に対する国民の印象は悪くない。参院選後にTPP参加を表明して公約違反を追及されるよりも、国民の支持が得られやすい今のタイミングで決断する方が得策と判断した可能性は高い。
TPPをめぐる茶番劇もようやく終わりそうな状況となってきた。
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