Amazon課税包囲網が完成。だが日本の出版業界は暗い顔。その真意とは?
米国カリフォルニア州において、インターネット小売業者(Amazonがターゲット)に対する課税法案が施行される。ニュージャージー州でも同様の法律が適用される見込みで、Amazonは通常の小売店と同様、売上税(厳密は売上税相当)を全米で支払わなければならない公算が高くなってきた。
これまで州内に事業所を持たないネット通販業者には売上税が適用されておらず、これによってAmazonは巨額の利益を得てきた。同社の規模が巨大化するにつれてこのことが各州で問題となっていた。各州が同様の法案を通せば、事業所がどこにあってもAmazonは売上税に相当する税金を納めなければならなくなる。
一方Amazonは日本でも消費税を納めていないのではないかという疑念の声もある。特に電子書籍が普及すると、サーバーが海外にある場合には課税することが難しくなる。
財務省では、海外企業が日本国内で電子書籍を販売する際に消費税を課税できるよう、法令改正を行う予定だ。早ければ2014年にも課税に踏み切るという。
インターネットの普及に対して課税システムが追いつかない状況が、内外でようやく改善される見通しになってきている。Amazonの課税問題がほぼ決着して、出版業界はホッとしているかと思いきや、実はそうでもないらしい。ある出版業界の人物は「これでAmazonが悪いという言い訳が使えなくなった」とため息をつく。
これまで日本の出版業界は、再販制度という規制に守られ企業努力を怠ってきた。Amazonが伸びているのは、税金面でズルをしているからではなく、サービスの質がよいからだ。税制における不公平が解消されてしまうと、今度こそ本当に正々堂々とAmazonと競争しなければならない。
だが今の日本の出版業界においてAmazonに本気で勝てると思っている人はほとんどいない。課税問題の解決は、Amazonの急成長にブレーキがかかったのではなく、これから本当のAmazon躍進が始まる合図なのかもしれない。
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