ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

中国初の空母「遼寧」が青島に配備。地政学的にそれが意味すること

 

 中国海軍は27日、中国初の空母「遼寧」の母港を青島とし、同艦の着岸を完了したと発表した。「遼寧」はウクライナから購入した空母「ワリャーク」を改修したもので、中国初の空母。大連で大規模な改修を行い昨年9月に海軍に引き渡された。しばらくは大連港を拠点に試験航海を行っていたが、今後は青島を母港として活動を行う。

 当初「遼寧」は、南シナ海におけるフィリピンとの領有権問題から、海南省に配備するとの情報もあった。
 今回、青島へ配備されたこといついて、一部からは尖閣諸島問題に対する日本側への圧力との見方も出ている。だが中国メディアでの報道や総合的な状況を考え合せると、必ずしも日本に対する圧力ということでもなさそうだ。

 まず理解しなければならないのは、「遼寧」は現時点では戦闘能力を持っていないという点だ。中国はこれまで空母を運用したことはなく、遼寧がはじめての空母経験となる。艦載機の着発艦や日々の運用などについて、これから何年もかけて経験を積み、データを蓄積しないと、今後の本格的な運用に発展させることはできない。
 中国は次期空母は国産のものを採用する計画を立てており「遼寧」は国産空母開発のための基礎データを収集することが最大の任務である。

 基礎データとは空母そのものにとどまるものではない。艦載機を運用するための大型空港設備、船のメンテナンスを行う造船所、食糧などの補給態勢、乗員の生活インフラなど多岐にわたる。また空母だけでなく、多数にのぼる随伴艦のスムーズなオペレーションも重要だ。

 中国国営中央テレビでは、空母運用の条件として、大型の港湾設備、後方支援体制、メンテナンス体制、乗員の受け入れ施設の4つをあげ、青島が最適であると解説している。
 青島はもともとドイツの軍港として発達した街で日本占領後は日本の軍港となっており、港としての体制が確立している。また最近では青島は工業都市として発達しており、鴻海精密工業の巨大工場が設立されるなど、十分な工業インフラが整っている。

 空母は巨大なプラントであり、それを維持するためには、相当の工業インフラが必要となる。米国最強の艦隊である第7艦隊が横須賀を母校にしているのも同じ理由からだ。アジアにおける米国の同盟国で、原子力空母を中心とした巨大艦隊をメンテナンスできる工業インフラを持つ国は日本しかないのだ。

 中国の空母運用はまだはじまったばかりであり、ノウハウを蓄積するまでには時間がかかるだろう。だが近い将来、中国は日本と同レベルかそれ以上の空母メンテナンスのノウハウを蓄積することになる。攻撃兵器としての「遼寧」はまだハリボテだが、遼寧の配備によってもたらされる日本の地政学的な意味は、ゆっくりだが確実に変化しはじめている。

 - 政治

  関連記事

jinminginkou
まさに同床異夢。人民元変動幅の拡大で中国は元安、米国は元高を狙う

 人民元の対ドル・レートの下落が続いている。きっかけは、中国人民銀行が発表した、 …

cybertero
米ITセキュリティ会社が、中国人民解放軍をハッカー首謀者と断定する報告書を公開

 米国の情報セキュリティー会社マンディアントは19日、米国に対するハッカー攻撃の …

bananki
バーナンキ議長がとうとう量的緩和策終了に言及。いよいよ本格的なドル高が始まる?

 米FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は6月19日、連邦公開市場委員会 …

kokusaishushi201312
国際収支を見れば、日本の輸出不振は1990年代から始まっていた事が分かる

 財務省は2014年2月10日、2013年12月の国際収支を発表した。最終的な国 …

aso03
公的年金による株の買い支えを示唆した麻生財務相の発言。真意はどこに?

 麻生財務相が公的年金による株の買い支えとも取れる発言を行ったことが株式市場で話 …

isihara
石原慎太郎東京都知事が国政復帰を宣言。だが時すでに遅し

 石原慎太郎東京都知事は25日、都庁で記者会見を行い、都知事の辞任と次期衆院選へ …

kuroda02
黒田日銀総裁が、現在の政府債務は持続不可能と財務官僚らしい発言。その背景とは?

 日銀の黒田総裁は3月28日、参院財政金融委員会において、「政府債務のGDP費が …

stigurittuabe
スティグリッツ氏の主張は実はアベノミクスと正反対。それでも来日した理由とは?

 安倍首相が、世界的な経済学者を次々に官邸に呼んで会談を行っている。永田町では消 …

tanakashuonrai
北朝鮮特使との会談でも実施された、相手を翻弄させる中国の外交テクニック。

 北朝鮮の金正恩第1書記の特使として中国を訪問した朝鮮人民軍総政治局長の崔竜海氏 …

abe5gatsukeizai
萎む成長戦略。最高裁判断まで出ている薬のネット販売解禁が規制緩和の目玉だって?

 アベノミクスの要として市場から多くの期待を集めていた成長戦略の雲行きが怪しくな …