ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

従業員の発明による特許も基本的には企業帰属へ。職務発明制度の見直しがスタート

 

 政府は、企業の従業員が仕事で発明した「職務発明」の特許について、その権利を従業員ではなく企業に帰属させる方向で見直しを開始した。
 官邸の知的財産戦略本部(本部長・安倍晋三首相)は、当該内容を盛り込んだ「知的財産政策ビジョン」を4月にまとめる方針。有識者からなる作業部会で議論を進める。

 現在の特許法では、職務発明の権利は原始的には従業員に帰属することになっているが、企業側はその特許を使用することができ、従業員への対価は、自主的な取り決めにゆだねるとしている(特許法35条)。
 だが、「相当の対価」がいくら なのかを巡って企業と発明者の間で争いが起きている。もっとも有名なのは、青色発光ダイオード(LED)を巡る訴訟だ。
 2001年、開発者の中村修二氏が勤務先の日亜化学工業を訴え、最終的に約8億 4000万円の支払いで和解した。どの程度の対価がふさわしいのか明確な基準がないと、海外企業を誘致する際のリスク要因になると指摘されている。
 実際に、日本で研究開発を行いたいという海外企業がどの程度あるのかは微妙なところだが、企業側のリスク要因であることは間違いない。

 ちなみに諸外国では、米国はすべて発明者に帰属、ドイツは日本と近い制度だが対価の算定基準が策定されている。英国やフランスは企業側に帰属するのが原則だ。
 もっとも米国の場合は、従業員に権利が帰属するといっても、終身雇用がまったく保障されないドライな契約社会である。特許の対価も含めて雇用契約が結ばれるケースが多く、その意味では、発明の対価を個人がすべて受け取れるケースはほとんどない。

 日本の制度の問題点は、企業は事実上社員を解雇できず終身雇用と年功序列賃金が社会から強制された状態であるにも関わらず、特許の概念だけが競争原理主義の米国型であるという点だ。もしすべてが個人に帰属するなら、企業と従業員の雇用関係もすべて契約主義にならないとバランスが取れない。中村氏の訴訟はある意味で、司法制度の矛盾を突かれた事例といってよい。

 日本型の雇用慣行が変化する兆しはないことを考えると、ガイドラインを定めるドイツ型か、基本的に企業に権利を帰属させる英仏型を軸に議論が進められる可能性が高いだろう。

 - 政治, 社会, 経済

  関連記事

stap20140409
小保方氏が初の記者会見。なぜデータの差し替えを行ったのか?

 STAP細胞の論文について不正があると指摘されている問題で、研究の中心人物であ …

kissinger
キッシンジャー氏が尖閣問題について発言。だが、その背景はちょっと微妙!

 米ニクソン政権の国務長官で米中国交回復のキーマンであったヘンリー・キッシンジャ …

jisinmap
熊本は「安全地帯」で東北は「危険地帯」というサイトが出来上がってしまう理由

 熊本県は2016年4月20日、「東北は地震の危険地帯」などと記載していた熊本県 …

oyako
アップルがFBに続いて卵子凍結費用を補助。女性社員引き止めに手段を選ばず

 米アップルは、優秀な女性人材を確保するため、希望する女性社員に対して卵子凍結費 …

iryouhi
自業自得患者の自己負担を上げれば医療財政が改善できるというのはまったくの幻想

 テレビ局の元アナウンサーがブログで「自業自得の人工透析患者なんて全員実費負担に …

ieren03
イエレン議長が1期で退任の可能性が高まる。後任によってはリスク要因にも

 米FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長が2018年2月に1期で退任する公 …

putin02
プーチン大統領が離婚をカミングアウト。世界的に進む権力者の透明化

 ロシアのプーチン大統領がリュドミラ夫人と離婚したことを明らかにし、大きな話題と …

senkaku
中国が南シナ海で実力行使を宣言。尖閣諸島ではそうしない理由

 中国の国営新華社通信は29日、南シナ海で中国が領有権を主張する海域に入ってきた …

yakuinousetsu
日本企業の経営環境が激変?金融庁と東証がまとめた統治指針案のインパクト

 金融庁と東京証券取引所は、上場企業に少なくとも2名以上の社外取締役の設置を求め …

beikokuoil
米国がとうとう原油の輸出解禁へ。地政学的にも経済的にもインパクトは大きい

 米国のオバマ政権がとうとう米国産原油の輸出規制緩和に乗り出した。米紙ウォールス …