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スイスで経営者の高額報酬に制限。だが役員報酬が世界で最も割高なのは日本企業だ

 

 スイスで3月3日、企業経営者の高額報酬を制限するか否かを問う国民投票が実施され、7割近い賛成多数で、制限導入が承認された。スイスの国会はこの結果をもとに法案を審議しなければならない。

 国民投票の提案者であるミンダー氏(中小企業の経営者で市議会議員)の名前を取ってミンダー・イニシアチブと名付けられた提案は、上場企業の株主が経営陣の報酬に制限を課したり、法外な退職金の支払いを阻止したりできるようするというもの(本誌記事「スイスで経営者の高額報酬を制限する国民投票を実施。立役者の主張とは?」参照)。
 報酬制限に違反した企業幹部には罰金や3年以内の禁錮刑を科す。投票者の67.9%が報酬制限の導入に賛成したという。

 この提案の本質は経営者の高額報酬をやみくもに制限するというものではない。経営者の報酬は株主が決めるべきだという、株式会社の原理原則を貫いた提案と理解すべきものである。
 だがスイスに拠点を置く、国際企業の多くは反発している。一部の企業はスイス以外に拠点を移すことをにおわせているが、役員報酬以外にも税制面などでスイスには多大なメリットがあり、実際に多くの企業が国外流出するのかは微妙だ。

 スイスでのこの動きを受けて、日本の市場関係者の一部からは「高額報酬の制限はむしろ日本でこそ提案すべきだ」という声も聞かれてくる。日本の企業経営者の報酬は諸外国よりも安いというイメージだが実際は違う。ある意味でもっとも日本の経営者はオイシイ思いをしている。

  主要企業の役員報酬の平均は、イギリスが約6億5000万円、スイスは約5億円、フランスは約4億2000万円である。非常に高額に見えるが、企業の収益は日本とはケタ外れだ。
 例えば日本では東芝やソニー、NECなどは巨大企業と思われているが、グローバルでみればただの中小企業である。東芝のライバルであるGEの売り上げは約12兆円だが東芝の売り上げは半分の6兆円しかない。利益に至っては20分の1といったレベルだ。

 諸外国で社長在任中に売上や利益が横ばいやマイナスに推移すれば、経営者は即刻クビである。求められるレベルが違うのだ。確かに日本では5億、6億という経営者は少ないが、1億円以上の役員報酬をもらっている人はゾロゾロいる。日本企業はもっともラクに経営が出来て報酬が高いのが特徴なのである。

 さらに、海外ではもらえない巨額報酬を代わりに日本でもらおうという経営者もいる。日産のカルロス・ゴーン会長だ。2011年のゴーン会長の報酬総額は1270万ユーロ(15億6000万円)だが、そのほとんどは日産からのものだ。親会社であるルノー本体からは280万ユーロ(約3億4000万円)しかもらっていない。つまりフランス本国ではゴーン会長の価値はその程度なのだ。だが日本では10億円以上の報酬をポンと払う。ゴーン会長は笑いが止まらないであろう(本誌記事「ルノーの労使交渉で露呈した、ゴーン会長が受け取る巨額報酬の真相」参照)。

 グローバルスタンダードで物事を考えるなら、日本の大企業は世界でもっとも収益力が低い部類に入る。億単位の役員報酬をもらう資格はゼロといってよいだろう。

 - 政治, 経済

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