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まるで大政翼賛会?閣僚が名指しで企業の賃上げに言及。賃上げは本当に正しいのか?

 

 甘利経済再生相は5日、コンビニエンスストア大手が相次いで賃上げを表明したことを受け「次はファミマ(ファミリーマート)という風に期待している」と述べ、事実上名指しで特定企業の賃上げに言及した。閣僚が特定企業の賃上げに言及するのは異例中の異例。

 安倍政権は2%の物価目標を掲げており、そのためには企業の賃上げが不可欠と判断。安倍首相は、業績改善をしている企業に対して賃金アップを要請している。
 この流れを受けてローソンが正社員3300人の年収を約3%引き 上げると発表。さらにセブン&アイ・ホールディングスが全社員を対象にベースアップを行うと発表した。コンビニ最大手で賃上げを表明していないのはファミリーマートだけであることから、同社に矛先が向いた格好だ。

 だが特定企業を名指して、閣僚が値上げを強要するかのような発言を行ったことに対して、市場からは「まるで大政翼賛会だ」との声も上がっている。
 安倍首相や甘利経済再生相にはおそらく他意はなく、景気回復を期待する無邪気な発言なのだと思われる。だが本人に意識がないだけに、さらに状況はやっかいだ。

 閣僚が賃上げについて軽はずみに発言することや、それを受けて上場企業の経営者がいとも簡単に賃上げを決定するという「軽さ」はこの際、置いておいたとしても、この段階において、雇用の拡大ではなく、正社員のみの賃上げを実施することが正しいことなのか、マクロ経済的にもいろいろと問題がある。

 インフレ期待が醸成される中、GDPの6割を占める個人消費を活発化させるため、家計部門に資金を分配することには多くの人が理解を示すであろう。だが問題はその分配先である。

 コンビニ各社の賃上げはいずれも正社員が対象で、非正規労働者は含まれない。また現在失業中の人にとっても何の恩恵もない。
 年収450万円の人が3%賃上げになったとしても、将来の不安が解消されない限り、その人は増加分を全額消費に回すことはないだろう。だが正社員の賃上げは一時棚上げし、雇用の絶対数を増やす方向に持っていけば、消費は確実に増加する。いままで失業中だった人が就職先を確保することができれば、その人は収入のほとんどを消費に回すからだ(生活必需品なので消費せざるを得ない)。この効果は正社員の賃上げよりもはるかに大きいはずである。

 70年代の米国経済は、企業の競争力低下、石油価格の上昇などによってスタグフレーション(経済成長なきインフレ)に苦しんだ。まさに現在の日本と状況がよく似ている。
 米国がなかなかスタグフレーションから抜け出せなかったのは、労働組合が強く、正社員の賃金ばかりが上昇し、雇用が増えなかったからである。正社員の賃上げばかりを優先し、失業者対策を怠っていると、物価だけが上昇するという最悪の事態にもなりかねない。

 日本はこれからどんどん人口が減ってくる。正社員は日本の労働力人口の半分にしか過ぎない。これからは小額でもよいので、できるだけ多くの人が所得を得ることが極めて重要となってくる。特定の人だけを優遇して、その収入を少々上げたところで、全体への効果はたかが知れているのだ。

 - 政治, 経済

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