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安倍首相がハイパーインフレにはならないとの見解。だが本当にそうなのか?

 

 安倍首相は11日の記者会見で、日銀の金融政策に関連して「ハイパーインフレは考えられないと」述べ、大胆な金融緩和を進めてもインフレが制御できなくなる心配はないことを強調した。

 アベノミクスによる円高で株式市場が高騰していることをうけて、マスメディアの一部からは、はやくも日本のハイパーインフレを懸念する声が上がっている。
 安倍首相は「日銀は物価上昇率が目標の2%を超えた場合、 2%の中に収斂していくよう政策を進めるのは当然だ」と語り、必要に応じて金融の引き締めを行う姿勢を強調した。また「物価や長期金利の動向にきちんと目配せしていかないといけない」とも発言し、国債価格や金利の動向にも留意するとした。

 確かにハイパーインフレになるという話は現在の日本においては非現実的である。歴史上のハイパーインフレはそれこそ何億倍というレベルに物価が跳ね上がる状態のことを指しているからだ。
 第一次大戦後のドイツは国家予算の20倍もの賠償金を課せられ、中央銀行による直接引き受けでこの賠償金を捻出したため、空前のハイパーインフレになった。物価上昇は5年間で1兆倍という天文学的数字である。

 このレベルのインフレをハイパーインフレと定義するなら、日本がハイパーインフレになる可能性はほぼゼロといってよい。だが、日本は太平洋戦争の前後、ハイパーインフレとはいえないまでも、相当なレベルのインフレを経験している。
 膨大な戦費を国債の日銀直接引き受けに頼ったツケで戦時中から財政インフレが進行し、戦後の極端なモノ不足が重なり、最終的には物価は数十倍に跳ね上がった。当時は非常措置として預金封鎖と財産税の導入という暴力的措置でインフレを収束させた。

 もし日本の財政に対する信任が失われれば、この水準のインフレが発生する可能性はゼロではない。日中戦争以降、政府の財政負担が急上昇し、当時のマスメディアでは何度もインフレの危険性が叫ばれていた。だが、中国との戦争という大義名分の前に、金融引き締めを主張することは非国民扱いされ、結局、誰も引き締めを言い出すことはできなかった。

 現代の日本においても、債券市場で金利が急上昇し、利払い負担が増加することで国債をさらに増発しなければならない事態に陥る可能性は十分にある。この状況に加えて、中国との緊張がさらに高まり、防衛費の大幅増額を余儀なくされたらどうなるだろうか?
 中国に対する屈辱的な敗北を受け入れてでも防衛費を削減する、あるいは年金受給額を大幅にカットするといった国民に強烈な痛みを強いる政策を政治家と日銀は断行できるだろうか?

 このようなシナリオは最悪のものであり、現実化する確率は低いかもしれない。だが物価が1兆倍になるハイパーインフレの可能性はほぼゼロであるからといって、インフレによる危機を心配しなくてもいいということにはならない。
 70年代のスタグフレーションを鉄の意思で収束させたFRBのボルカー議長ですら、心構えとしては決死の覚悟だったことを忘れてはならない。

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ドイツ、ハイパーインフレ下の株式市場
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