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メタンハイドレートから天然ガスの採取に成功。だがあえて厳しいことを言えば・・・

 

 政府は3月12日、愛知・三重県沖の海底にある「メタンハイドレート」から天然ガスの取り出しに成功したと発表した(写真:JOGMEC)。メタンハイドレートを海底で分解してガスを取り出したのは世界初。

 メタンハイドレートは、天然ガスの主成分であるメタンが低温、高圧の状態で結晶化した物質。主に海底に分布しており日本の近海にも比較的豊富に存在している。
 今回産出に成功した地域には日本の天然ガス消費量の14年分のメタンハイドレートがあると推定されており、開発に成功すれば他国に依存しないエネルギー源を持つことになる。

 今後2週間程度、試験を続け、商業化に必要な技術や課題を探るという。政府の計画では2018年までに産出技術を完成させるとしているが、実用化には課題も多く10年以上かかるとの見方もある。

 実用化のメドはともかくとして、メタンハイドレートの試験採掘に成功したことは、独自資源を持たない日本にとっては朗報といえるだろう。今回の採掘成功をきっかけに、一部からはメタンハイドレートの開発を官民をあげたプロジェクトとして推進すべきとの声も聞かれる。だが、独自資源の開発を国家プロジェクトとして実施すれば日本のエネルギー問題が解決できるかのような安易な楽観論を持つことは危険である。

 それは米国のシェールガス開発の経緯を見れば明らかだ。わずか10年前までシェールガスが次世代エネルギーの主役になるとは誰も考えていなかった。米国では石油に代わるエネルギー源として、ありとあらゆるものが試されてきた。一時はバイオ燃料に注目が集まり、全米のとうもろこし畑に投資ファンドが殺到したこともあった。
 米国がシェールガスというエネルギー革命を成功させることができたのは、エネルギー開発を国家プロジェクトにしなかったからである。政府は民間の投資を呼び込む仕組み作りに専念し、あとは市場にすべてをまかせたのだ。シェールガス成功の影には、無数の失敗プロジェクトが存在していることを忘れてはならない。
 だがこれを政府のプロジェクトとして実行してしまうと「その時点で確実そうに見える」技術にしか投資できなくなる。まったく見通しが立たないプロジェクトには税金を投入できないからである。だがイノベーションとは得てして誰も見向きもしない分野から起こるものである。
 オバマ大統領の肝煎りで多額の税金を投入した太陽光パネルの開発プロジェクトは結局うまくいかなかった。

 メタンハイドレートがうまくいくか、いかないかは誰にもわからない。だが官民を挙げた国家プロジェクトにした瞬間に「失敗できないプロジェクト」になり、イノベーションが停止する可能性がある。

 新しいエネルギー源の研究としては、藻類から油を抽出する技術やミドリムシを使ったものなど、実に様々なものがある。
 官民を挙げて独自資源を開発するという資源ナショナリズムは多くの国民にとって気分がよく、予算を獲得できる官僚にとってもいいことずくめである。だが、今の日本において本当に大事なことは、資源ナショナリズムを煽ることではなく、民間のイノベーションを活発化させるための地道な環境整備である。

 - 政治, 経済

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