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国会の憲法審査会がスタート。だが天皇制や9条をめぐる議論はトンチンカンなものばかり

 

 衆議院憲法審査会は3月14日、安倍政権発足後初の会合を開き、日本国憲法における「天皇制」と「戦争の放棄」について論点整理を行った。
 自民党、日本維新の会、みんなの党は憲法で天皇を「元首」と位置づけ、集団的自衛権を行使できる旨を明示するという方向で一致した。一方、民主党は天皇制について「改正は必要ない」との見解を明らかにした。公明、共産、生活の各党も改正に否定的な考えを示した。

 だが各党の議論の中身をよく見てみると、本当に法や政治体制のことを理解しているのか?と首をひねりたくなることばかりだ。

 自民党の船田元氏は天皇制について「天皇は元首であるべきだ」(日経)と主張したという。
 話の前後が不明なので断定はできないが、現憲法下において天皇が元首でないかのようなニュアンスである。また集団的自衛権についても自民、維新、みんなの三党は「「行使できる旨を確認する規定を置くべきだ」とし、こちらも現在の憲法では集団的自衛権が行使できないかのような発言となっている。

 船田氏に限らず、日本人の多くが、天皇制(君主制)や国家の自衛権について根本的に誤解しており、このことが、天皇制や憲法9条の議論を不毛なものにしている。

 まず天皇制だが、憲法の条文に記載があるのかないのかに関わらず、君主が存在している以上、その国は君主制であり、君主が元首であることは自明の理である。当然、諸外国はすべて天皇を日本の国家元首として扱っているし、日本側もそう振る舞っている。
 日本は英国と同様、王室(皇室)の長を国家元首とし、主権者を国民とする民主国家であり、それ以上でもそれ以下でもない。また自衛権についても同様で、近代国家である以上、他国と戦争をする権利は当然に保持している。集団的自衛権はその延長として国連憲章でも定められており、議論する余地はない。

 憲法における象徴天皇制や平和主義は、これらを前提条件として記述されているものであり、条文を変えることで、根本的な考え方が変わるという性質のものではないのだ。天皇制や憲法9条を議論する際には、まずこのことを前提にしないと、そもそも議論が成立しない。

 どうも日本人は憲法より上の概念として、法の支配/法の精神というものが存在していることを理解できていないようである。

 だがこれは大変危険なことである。国会で制定された法の条文だけを絶対視するこの考え方は「形式的法治主義」といわれるが、これは民主主義を破壊する危険性を持っている。なぜなら、法の精神に反する憲法や法律を無効とすることができなくなるからだ。つまり日本では悪法が法としてまかり通ってしまうということである。

 例えば、ナチスドイツで制定された全権委任法(ヒトラーにすべての権力を預けるという法律)は、形式的法治主義の国では有効だが、法の支配、法の精神が存在する民主国家では本来無効となる法律である。また憲法で基本的人権を否定する文言が書かれたしても、その憲法は法の精神に照らせば無効なのだ。

 だが、条文に天皇を国家元首とすると記載しないと天皇を元首とは認めない、あるいは、自衛権を行使できると憲法に書かないと軍隊を持てないというわが国は、逆に言えば、憲法や法律に書いてあれば何でもアリということの裏返しだ。実際、日本ではこれに近い事例が散見されている。

 民主国家における王室の在り方、他国と戦争をする権利、基本的人権など、現代の民主国家を運営する上では常識となっている事柄が、ひょっとすると日本人には理解できていない可能性がある。このような幼稚な状態で、憲法を改正するとどんな結果になってしまうのか、溜息が出てしまいそうである(本誌記事「憲法改正の動きが本格化?だが本当にまともな憲法が自主制定できるのかと疑問の声も」参照)。

 - 政治

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