ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

中国鉄道省の解体は日本の国鉄民営化と同じ。高度成長の終了を意味している

 

 中国・北京で開かれていた第12期全国人民代表大会(全人代=国会に相当)は17日午前に閉幕式が行われ、13日にわたる日程のすべてを終了した。

 今回の全人代では、国家主席に習近平氏が、国務院総理(首相)に李克強氏が正式に選出され、一足先に新体制がスタートしていた党に続いて、政府組織においても、習近平-李克強の新体制が活動を開始することになった。

  中国の新体制については、今後の経済政策をどのように進めていくのか、日本をはじめとする近隣諸国や米国に対してどのようなスタンスで臨むのかについて注目が集まっている。現段階では新指導部の明確な方向性は明らかになっていないが、ひとつ確実に言えることは、中国は、従来のような驚異的な経済成長を持続できる可能性は小さいという点である。

  それは今回の全人代で決議された鉄道部(鉄道省)の解体にすべて集約されているといってよい。全人代では400以上の議案が審議されたが、その中でも目玉となったのが国務院の機構改革であり、鉄道省の解体はその中核をなすものであった(本誌記事「中国政府機構改革案。太子党利権である鉄道省は解体、尖閣対策に海洋局を強化」参照)。

 中国の鉄道省は職員210万人を要する中国でも最大規模の官僚組織である。今回の改革によって、鉄道政策を立案する行政部門は「鉄道管理総局」として交通運輸省に吸収され、実際の鉄道運行を担う営利部門は国有企業「中国鉄道総公司」として再出発する。

 鉄道省は全国に鉄道を敷設するという巨大プロジェクトを抱えていることから、中国最大の利権官庁といわれており、江沢民元総書記を筆頭とする派閥がその利権を欲しいままにしてきた。

 これまで何度も鉄道省の解体が試みられてきたが、党内の強い抵抗で実現できなかったという経緯がある。
 だが、2011年7月に浙江省で起きた高速鉄道事故をきっかけに、胡錦濤氏が一気に攻勢を強め、鉄道省の解体が進むことになった。

 

 派閥争いの結果としてみれば、胡錦濤氏が鉄道省の解体を通じて、江沢民氏の影響力を排除することに成功したということになるのだが、江沢民氏側が鉄道省利権を失うのは、ある意味で時代の流れでもあった。国内の鉄道開発プロジェクトがあらかた終了し、鉄道省には公共工事利権としての「うまみ」がなくなりつつあったからである。このことは中国の驚異的な経済成長が徐々に低下し、普通の国に変わることを意味している。

 中国はこれまで驚異的な経済成長を遂げてきた。日本人の多くが、中国が世界の工場になり、大量の工業製品を輸出して儲かっているようなイメージを持っている。そういった面も確かにあるが、中国の驚異的な成長の源泉は、国内のインフラ整備であり、鉄道省はその中核的な存在であった。中国は国内インフラの整備を終了する段階に入りつつあり、それにともなって成長スピードも鈍化してきている。
 李克強首相は2020年まで7%成長を継続させるとしているが、実現するのは困難との見方も多い。

 これはかつての日本とまったく同じ光景である。日本でも旧国鉄は最大の公共工事利権を持つ官庁として絶大な権力を持っていた。だが日本が高度成長を終え成熟国家となるにしたがって国鉄はその役割を終えた。中曽根内閣時代、国鉄の民営化がスムーズに進んだのは、国鉄が公共工事の利権官庁としての「うまみ」をすでに失っていたことを示している。中国は日本に遅れること、約30年で同じ道をたどっていることになる。

 鉄道省が持つ債務2兆6000億元(約40兆円)の最終的な引き継ぎ先はまだ決まっていない。高速鉄道による利益があるので当面は負債の返済には問題がないかもしれないが、やがて債務問題として中国経済の負担となる可能性もある。ちなみに日本の旧国鉄における債務総額は約37兆円で、うち25兆円は清算事業団に移管され、12兆円は民営化されたJRが引き継いだ。

 - 政治, 経済

  関連記事

hasimoto2
橋下氏が石原氏とたちあがれの分断工作を開始。石原氏最大の弱点が露呈!

 次期衆院選を控えた「第三極」勢力の結集をめぐって、橋下徹大阪市長による「たちあ …

pakukune
韓国次期首相候補が息子優遇で批判。毎回同じことの繰り返しが続く

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)次期大統領が指名した首相候補の金容俊(キム・ヨンジュ …

abeamari
産業競争力会議がテーマ別会合をスタート。雇用流動化や企業再編は実現できるのか?

 政府の産業競争力会議3月6日、テーマ別会合の議論をスタートした。この日は「人材 …

makein
世界のあちこちに顔を出す米国政治のキーマン、マケイン上院議員に要注目

 米共和党の重鎮で、大統領選にも出馬した経験のあるマケイン上院議員の活躍が目立っ …

saiki
外務省の斎木次官が訪中。だが今のところ日中首脳会談開催のメドは立たず

 外務省の斎木事務次官は7月29日、中国を訪問し、中国外交部(外務省)の王毅外相 …

siriakougeki
米国第一主義を掲げる保守強硬派がシリア攻撃をめぐりトランプ政権内で孤立

 米国がシリアの軍事施設を攻撃したことで、市場にはちょっとした動揺が広がっている …

frbieren201407
米国は利上げが近い?イエレン氏の発言に最初に反応したのは為替

 ドル円相場が急展開を見せている。最近まで1ドル102円前後を行き来している状態 …

sinreiauto
セブン-イレブンが店内レイアウトの全面刷新に乗り出した背景

 コンビニ最大手のセブン-イレブンが店舗レイアウトの全面刷新に乗り出した。背景に …

keijiban
中国共産党が国民からの不満や要望を受け付けるサイトを構築。明るい文化大革命?

 中国共産党は、国民の党や政府に対する不満の高まりを背景に、国民からの声を集める …

tokyoelec
東京エレクトロンと米アプライドの「対等」な合併という真の意味は?

 半導体製造装置国内トップの東京エレクトロンと、世界シェアトップの米アプライドマ …