イオンがダイエーを吸収合併?イオンによるダイエー株取得が意味するもの
小売り大手のイオンが、丸紅が保有するダイエーの株式を買い取ること前提に丸紅と交渉に入った。イオンはダイエーに対する株式の公開買い付け(TOB)も視野に入れており、もし実現すれば、全体の売上高が6兆円を超えるグループが誕生することになる。
現在スーパーを中心とする大手小売店は、人口減少、デフレによる価格低下、購買行動の変化などによって、毎年売上高が数%ずつ減少するという異常事態が続いている。
現在イオンの売り上げは約5兆円、セブン&アイ・ホールディングスは約4.8兆円だが、日本ほどの経済規模の国としては両社の売り上げはあまりにも小さい。
米国最大のスーパーであるウォルマートの売り上げはなんと43兆円、日本よりはるかに経済規模の小さいフランスのカルフールですら5兆円の売り上げがある。
国際的に見て規模が小さく、市場の縮小が続く日本においては、大手が合併して合理化を進めることはある意味で必須の状況といえる。
だがイオンにとってみれば、本来はもっと早く巨大化を進めたかったというのがホンネだろう。日本の流通大手企業の規模が諸外国と比べて小さいのは、小規模な商店を保護するために大型店舗の出店を法律で規制してきたからである(大規模小売店舗法)。小規模店舗の保護は一見、正当性があるように見える。当初は確かに効果を上げた面もあったが、やがてこの法律は政治利権化し、価格が高く競争力のないゾンビ商店を延命させる結果となった。
流通大手は大規模な店舗を出店できないため、やむを得ずコンビニという業態を模索した。コンビニは店舗規模が小さく収益性が低いので値引き販売ができない。結果として、日本の消費者は値引きが一切ない極めて割高な商品を買わされることになった。コンビニのような業態が全国津々浦々に普及しているのは日本だけである。
結局、地域の小規模店舗を保護したつもりが、法の抜け道となったコンビニにすべて駆逐され、地方の商店街は壊滅した。一方、日本の消費者は高い買い物を強いられたままだ。
本来イオンは大店法がなければ米国のウォールマートを目指し、一気に巨大化を進めていたはずである。確かに一部の地域商店は撤退を余議なくされるかもしれないが、国民の多くは安い買い物ができ、大規模店を中心に新しい商店街が形成され、地方の人口減少に歯止めがかかっていた可能性が高い。
だが今となっては、前向きの合従連衡ではなく、縮小市場で生き残るため、後ろ向きの合理化を模索しなければならない状況となっている。イオンによるダイエーの吸収はそのようにとらえるべきニュースといえるだろう。
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