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キプロスの預金没収で脳裏によぎったのは、日本における「預金封鎖」と「財産税」

 

 ユーロ圏がキプロスに対して行った銀行預金に対する最大約10%の課徴金徴収について、市場関係者の中から「非常に乱暴な行為であり、悪しき前例になる」との声が上がっている。
 特に歴史を知る日本の市場関係者の中には「預金封鎖」「財産税」という、封印されたはずのキーワードが脳裏をよぎった人もいた。

 国民が持っている財産に直接課税することは、国民の財産権を侵害する可能性があるため、その施行に際しては慎重さが求められる。
 一般的に容認されているのは不動産に対する固定資産税や相続税くらいなものである。だがキプロスの支援策ではその一線をあっさりと越えてしまった。

 これはキプロスが租税回避地として欧州全体から不透明名資金を集めているという背景があってのことなので、これがそのまま他国にも適用されるというわけではない。とはいえ、私有財産の維持が保障されないと、そもそも現代資本主義のシステムが成立しないことを考えれば、この措置は根本的な危険性をはらんだものといってよい。

 キプロスの話題は、多くの日本人にとって地中海にある遠い島国の話かもしれない。だがこの話は決して他人事ではない。この日本でも同じような措置が実施された過去があるのだ。戦後のインフレ対策として行われた預金封鎖と財産課税である。

 日本は太平洋戦争の戦費を調達するために、国債の日銀引き受けを連発した。その結果、深刻な財政インフレをもたらし、戦争による物資の困窮も手伝って戦後には猛烈なインフレとなった(財政的には現在の日本とよく似ている)。天文学的な数値となった財政赤字を埋めあわせ、インフレを収束させるために、日本政府が導入したのが「預金封鎖」と「財産税」であった。

 ある日、銀行の預金が突然引き出せなくなり(緊急金融措置令および日本銀行券預入令)、封鎖された預金に対して最高で90%にも達する税金が課せられたのだ(財産税法)。預金を持っていた人はその資産のほとんどをこの措置で失ってしまった。
 もしインフレが限りなく進行し、収拾がつかなくなった場合には、このようにして強制的に財産を没収しインフレを止めるか、インフレを放置して実質的に紙幣を紙くずにしてしまうかのどちらかしか解決方法はない。

 以前、財務省が財産税を導入した場合のシミュレーションを行っていると報じられたことがあった。記者からの質問を受けた財務省幹部は「下らない」と一蹴したが額面通りに受け取ることは危険だ。
 現在の憲法では財産権が保障されているので実施は無理という意見もあるが、それは国家権力を甘く見た無邪気な考えである。確かに財産税そのものは日本国憲法が公布される直前、ドサクサに紛れて帝国憲法下で施行された。だが預金封鎖は政令である。財産税についても財産税という名目にしなければよいだけだ。現在でもやる気ならいつでも実施できる。国家とはそういうものだ。

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