北朝鮮の強硬姿勢によって米の軍事費削減に赤信号?現状維持派の策略との声も
敵対的な姿勢を強める北朝鮮への対抗措置から、米軍が相次いで兵力の追加配備を迫られている。大規模な軍事費削減を行っている米軍としては手痛い出費が続いている。
ヘーゲル国防長官は3月15日、北朝鮮やイランからの攻撃に対する防衛力強化の一環として、地上配備型迎撃ミサイルを米国西海岸に追加配備すると発表した。
現在30基あるミサイルを2017年までに14基追加して合計44基とする。今回の迎撃ミサイルの追加配備を含む防衛コストの増加は10億ドルに上るという。
さらに米軍はグアムに配備している戦略爆撃機B-52を朝鮮半島での訓練に投入することを明らかにした。
韓国を訪問中のカーター国防副長官は「米国のあらゆる可能な能力を韓米同盟に注ぐことを保障する」と述べるとともに、「米国には予算問題があるが、韓国に提供される戦力は最優先する」とし、予算問題に関係なく韓国支援を続ける意向であることも明らかにした。
米国は現在、国を挙げての予算削減の真っ最中。特に軍事費については10年間で4870億(約44兆円)もの削減が実施される予定。先日就任したばかりのヘーゲル国防長官は、軍事費削減をスムーズに実施することがミッションとなっている国防長官といえる(本誌記事「米国で歳出の自動カットがスタート。オバマ大統領がこれを強行する真の狙い」参照)。
ヘーゲル国防長官は、昨年1月に策定した国防戦略を全面的に見直すようカーター副長官に指示したばかりだ。
だが北朝鮮の思わぬ強硬姿勢に、相次ぐ追加出費を強いられることになり、軍備費削減の実効性を疑問視する声が出始めている。米軍内部では、予算削減に合わせて装備や兵力の体質改善を図ろうという勢力と、従来の体制を維持しようというグループに分かれている。
うがった見方をする人の中には、北朝鮮の好戦的な姿勢も、現状の軍備を維持しようという勢力が北朝鮮と内通した結果だと考える人までいる。
アフガニスタンのカルザイ大統領は、今月10日にアフガニスタンを訪問したヘーゲル国防長官に対して、米軍の撤退を遅らせようと、米国の一部勢力がタリバンと結託しているのではないか?と怒りを爆発させている(本誌記事「アフガン撤退に暗雲?ヘーゲル国防長官がアフガンを訪問するも、カルザイ大統領は激怒」参照)。
これは極端に過ぎるのかもしれないが、少なくとも、二期目を迎えたオバマ政権の軍に対する対応は出鼻をくじかれた格好だ。
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