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病院にAED付きの自販機?追い込まれた自販機大国ニッポンの裏事情

 

 最近AED(自動対外式徐細動器)付きの自販機が急速に増えてきている。AEDとは、心停止(厳密は心室細動)を起こして倒れた人に電気ショックを与えて蘇生させる機械。動作は自動化されており、一般人でも操作することができる。救急隊が到着する前に措置をすることで脳に障害を負う確率を低減させることができる。

 どんな形であれ、AEDが普及すること自体は悪い話ではないが、この背景には、日本経済が長期間にわたって停滞を続けたことと、実は深い関係がある。

 自販機を設置する飲料メーカーがAED搭載機を推奨するのは、社会貢献しているイメージを高めたいからだ。
 というよりも、社会貢献というキーワードを掲げないと、これ以上、自販機を設置する場所を拡大することができなくなっているのだ。

 日本は世界でもダントツの自販機大国である。自販機の総数では米国よりも少ないが、人口当たりの台数で見ると日本は出して多い。日本のあちこちに自販機が林立しており、一部からは景観上の問題やエネルギーのムダ使いという点で疑問の声も上がっている。
 それはともかく、日本の津々浦々まで自販機を設置した結果、これ以上設置場所を拡大することが難しくなっている。冒頭のAED付きの自販機についても、何と大病院の外来に設置するというマヌケな例まで出てくる始末だ(病院で心臓の急患が出ても病院の施設は使わせてくれないのだろうか?)。

 日本が自販機大国である理由は、一般には機械好きな国民性などといわれているが実際には違う。過剰な保護政策と借金でがんじがらめになり、活力を失った地域商店の存在が、自販機が普及してきたもっとも大きな理由である。

 本来、商店にはビジネスサイクルというものがあり、一部の老舗を除いては、店は一定間隔で入れ替わるのが健全な姿である。だが日本では大手小売店の出店を法律で規制し、こういった競争を制限する政策を続けてきた。また事業ではなく個人に借金を負わせる融資制度もあいまって、店を畳むこともできず、事実上倒産しているが、とりあえず経営を続けているような個人商店が非常に多い。

 このような商店主にとって、自販機の設置で得られる代金は悪くない収入だ。自分で店番をしなくても、すべてメーカーの係員がやってくれる。事実上、店舗は開店休業状態なのに、店先にはおびただしい数の自販機が並ぶ異様な光景はこういった事情が背景にある。
 これは飲料メーカーにとっても悪い話ではない。小売店に競争力がついてしまうと、大量購入で値引きを要求されるからだ。自販機であれば値引きなしの定価で販売できるので、メーカーの儲けは大きい。
 コンビニも同様だが、缶やペットボトルの飲料を定価で消費者が買っている国など日本くらいなものである。結局このツケは消費者が負っているのだ。

 だがその自販機も、ここ10年で売上が30%も減少している。当然のことだ。なぜなら自販機の主な利用者は若者だが、現在の若者は経済的弱者であり、飲料を定価で買う余裕はない。社会貢献をうたって、あらゆる場所にAED付きの自販機を設置している背景には、こういった事情があるのだ。

 本来は地域の商店が活性化して、安い飲料が大量に売れる姿が望ましい。飲料メーカーもその方が最終的には利益になるはずだ。アベノミクスのインフレが、自販機大国日本の光景を変えることを期待したい。

 - 社会, 経済

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