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樹木希林の全身ガン告白に対して、アナウンサーが薄っぺらな無神経発言

 

 全身ガンに侵されているという女優の樹木希林の発言が大きな話題となっている。樹木は3月8日に行われた「日本アカデミー賞」授賞式の会場で、「私は全身ガンなので来年の仕事はお約束できないんですよ、本当に」とガンであることを告白した。

 樹木は2004年に乳がんとなり、翌年右乳房の全摘出手術を受けた。だが2007年には同じ場所でがんが再発し、放射線治療を受けている。さらに3年くらい前にガンの転移が確認され、その後は病院に行く度に新しいガンが見付かることになったので、もう病院には行っていないという。

 樹木の発言をめぐっては、現代日本人の社会性を反映するような反応が随所に見受けられた。
 樹木は発言後の取材に対しても、基本的に「ガンは治らない。治ったように見えるだけ」というスタンスに立って発言している。だが、あるTV番組では、樹木の気持ちはそっちのけで、アナウンサーが「がんは治る病気です」と繰り返し絶叫していた。

 樹木の言う通り、ガンは一部のものを除いて完治する病気とは認識されていない。医学の世界でガンは、「寛解」と呼び「治癒」とは表現しない。いつ再発するか分らないからである。
 もし体の寿命が再発に勝れば人生をまっとうできるが、残念なことに再発が早まればガンで死ぬことになる。また残念なことだが一旦再発すると、その後の状況は悪く、ガンが進行していく可能性が極めて高い。不幸な人は1~2年で再発する人もいるし、幸運な人は再発することなく一生を過ごすことができるかもしれない。これは厳然たる事実である。

 非常に残念なことに、この事実はガン患者本人しか理解していないことが多い。周囲の人間はガンは完治しないという自分にとって愉快ではない事実を見たくないが故に、ガンは絶対に治るということを、こともあろうにガン患者に押し付けているのだ。いつ再発するか分らない恐怖と闘っているのは患者本人だというのに。
 ガンは治ると絶叫しているアナウンサーからは、残された寿命は長くないという事実を受け入れ、それでも粛々と仕事をしている樹木に対する尊敬の念はこれっぽっちも感じ取れない。

 ガン患者に対するこういった反応は、見たくないものにはフタをするという、現代日本の悪しき習慣が大きく影響していると思われる。長寿国日本では、死因の圧倒的トップはガンであり、多くの人にとって避けて通れない問題である。将来は医学の発展でどうなっているかはわからないが、今のところは、ガンとは共存していくしか方法がないのだ。
 医学上の見地はともあれ、ガンは治るものなのか、そうでないものなのかについて、どう考えるかは個人の自由である。だがその個人的価値観を、ガン患者に押し付けるという無神経なことだけはあってはならないはずだ。

 病気に対してどのように向き合うことができるのかは、その社会の成熟度を示すバロメータといってよい。覚悟を決めたガン患者に、本人の意向と関係なく完治の希望を押し売りする社会は明らかに後進的といえる。日本では、インフォームドコンセントの問題や終末医療問題について議論が深まらないのは、こういったところにも理由がありそうだ。

 - 社会, 芸能

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