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政府、財界、労組による賃上げ協定構想が浮上。だが内容は賃下げを狙ったものだ

 

 労働者の賃上げが実現できるように、政府、経済界、労働組合の3者で協定を結ぶ構想が政府内部で浮上しているという。

 日本経済新聞の報道によると、検討されている協定内容は、企業が賃上げを実施する代わりに労働者は雇用の流動化を受け入れ、政府が財政面で後押しするというもの。記事では、1980年代のオランダの成功例にならい賃上げを目指すとしている。だがこの記事は、非常に不可解な内容である。

 記事で成功例として取り上げられているのは、1980年代にオランダで結ばれた労使協定。だが、この労使協定は、失業率の増加を防ぐためのものであり、賃上げを目的としたものではない。
 労働者の賃上げを抑制する代わりに、雇用を確保するためのもので、賃上げどころか、賃下げを狙った内容といってよい。

 現在、政府で検討されているという協定は、企業が賃上げを促進する代わりに労働者は解雇規制の緩和に同意し失業を受け入れる。さらに政府は失業者の就業支援を進めるという内容だ。つまり企業に残った労働者は賃上げの恩恵を受けられるが、その代わり失業率が増加することを意味しており、マクロ的に見れば実質賃金の切り下げになる。その意味ではオランダの協定と近いことになる。

 だが皮肉なことに、この考え方は経済学的には間違っていない。緩やかなインフレが進む中で、実質賃金が低下する局面では、経済成長率が高まるケースが多い。

 ここで問題となるのが、この記事が書かれた背景である。新しい政労使協定を検討している政府の真の目的は実質賃金の切り下げにあり、記事を書いた記者もそれを理解した上で、故意に反対の内容を書いているのか、それとも、政府も記者も経済をよく理解していないのかのどちらかである。

 もし前者であるとするならば、アベノミクスの賃上げというのは政治的ポーズであり、政府は賃上げよりも経済成長を優先していることになる。

 - 政治, 経済

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