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中小企業にも賃上げの動き?だが実態は弱肉強食が露骨になっているだけだった

 

 安倍政権が企業に対して異例の賃上げ要請を行う中、中小企業でも賃上げの動きが見られるようになってきた。内閣府と財務省がまとめた2013年2月の法人企業景気予測調査では、中小企業の利益配分先として「従業員への還元」を上げた企業が、前回調査よりも 7.4ポイント上昇し52.9%となった。だが調査の結果をよく見てみると、手放しでは喜べない現実が透けて見える。

 調査結果では確かに「従業員への還元」と回答した企業の割合は増えているのだが、前回の調査に続き、利益配分先のトップとなったのは「内部留保」である。しかも「設備投資」や「新製品・新技術の開発」はともに前年を下回った。つまり、将来に向けて投資する先はほとんどなく、世の中が賃上げの雰囲気になってきたので、とりあえず賃上げをするといった感じが見受けられる。

 同調査では企業の規模別に同様の質問を行っている。大企業と中堅企業では、1位は内部留保だが2位には中小企業とは異なり設備投資が来ている。中堅企業では3位に従業員への還元が入っているが、大企業では従業員への還元は3位にも入らない。

 このことは何を意味しているのだろうか?要するに大企業は将来に向けて明るさが見えつつあり、中堅企業もそれに続こうとしているが、中小企業にはまったく将来性が見えないということである。
 従業員にしてみれば賃上げは嬉しいことではあるが、一時的なものでは意味がない。企業はまず将来の成長に期待して設備投資や研究開発を積極的に行い、その成果が十分に上がったところで従業員の給料を増やしていくのが健全な姿であり、最終的には従業員の利益にもなる。
 大企業や中堅企業はその拡大サイクルに入りつつあるが、中小企業はそのサイクルに取り残されているのだ。

 日本では残念ながら中小企業のほとんどが、大企業や中堅企業の配下にある下請会社である。この事実を踏まえると、大企業と中堅企業が拡大サイクルに入っているのに、中小企業がそうなっていないのは、大企業と中堅企業が下請けの中小企業を完全に切り捨てているからと考えられる。

 もしグローバルな弱肉強食の論理を追及するなら、大企業も含めて苛烈な国際競争に晒すのがスジである。だがいわゆる日本的経営をつらぬくのであれば、下請けを切り捨てるやり方はフェアではないし、格差を助長するだけである。
 儲かっているときであれば奇麗ごとを言うことは簡単だ。だが状況が厳しく、薄明かりが見えてきた今こそ、日本的経営というものの真価が問われている。

 - 政治, 経済

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