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生活保護受給者のパチンコを制限する小野市の条例から見えてくるもの

 

 生活保護を受ける人たちがパチンコやギャンブルに浪費しているのを見つけた市民に通報を義務づけるという、兵庫県小野市の条例案が波紋を呼んでいる。

 この条例案の是非についてここでは議論しないが、むしろ興味深いのは、条例案に対する小野市民の反応である。
 小野市における議論を整理してみると、そもそもなぜ生活保護があるのかという根本的な部分について、市民の考え方と制度に大きなミスマッチがあるという実態が浮かび上がってくる。これは小野市だけの問題ではなく、日本全体にも共通したテーマである。

 小野市の条例案は、生活保護費の使途を制限し、過度にギャンブル等に浪費している受給者を見つけた場合は、市民に通報する義務を課すというもの。
 この件についての報道がされると、小野市役所には賛否のメール、電話が殺到したが、過半数が賛成だという。ということは、多くの市民が生活保護について、その資金使途を行政側で決定すべきだと考えていることになる。

 ここで重要となるのは、そもそもなぜ生活保護(社会福祉)があるのかという問題である。同じ福祉といっても、民主国家における福祉と非民主国家における福祉では、福祉に対する根本的な考え方が異なっている。

 民主国家における福祉は、最低限度の生活を送る権利が国民には存在するという権利の観点から実施される。
 原則論を言えば、あくまで権利であり義務ではないので、行政としてはその権利を保証さえすれば後は何もする必要はない。生活保護を生活費に回さずギャンブルに費やして破滅しようが本人の責任である。逆に行政側は権利を保障しているだけなので、その使途について口出しをすべきではないことになる。

 一方、民主国家ではない国の福祉は、権利ではなく、教育や更生という観点で行われる。受給者の生活をコントロールすることで自活できるように教育していくという視点である。この場合は、むしろ受給者がどのような生活を送るのかという点が重要となるため、行政は積極的に関与していくべきということになる。

 小野市の条例案に多くの市民が賛成していることや、市民に対してルールに違反した受給者を通報するよう義務付けていること、また小野市の蓬莱市長が「受給者の監視ではなく、見守りが目的」と発言していることな度を考えると、少なくとも小野市では生活保護については後者であると認識しているようである。

 日本における生活保護を中心とした福祉に関する議論は、非常に内容が偏っている。ほとんどが受給者の資金使途や生活態度などに関するものだ。
 生活保護に対してこれだけの異論が噴出する背景には、生活保護の目的と現行制度とのミスマッチが大きく影響していると考えられる。多くの国民が民主国家としての福祉を望んでいないのに、日本の現在の福祉制度は欧米の民主国家型になっているからである。
 つまり日本人は心の奥底では民主主義を望んでいないのかもしれない。

 - 政治

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