黒田日銀総裁が、現在の政府債務は持続不可能と財務官僚らしい発言。その背景とは?
日銀の黒田総裁は3月28日、参院財政金融委員会において、「政府債務のGDP費が200%を超える状態は持続不可能である」と述べ、国債に対する信任を維持することは極めて重要との見解を示した。
また日銀の大胆な緩和策が、財政ファイナンスにつながるとの指摘については、「中央銀行の信任に影響するので、財政ファイナンスになることはしない」と否定した。
かねてから否定している外債の購入については、円売り介入 と判断される可能性があるため、現状では困難との見方をあらためて示した。
黒田氏の一連の答弁は、非常に教科書的で整合性が取れている。だが、黒田氏の金融政策が完全にイメージ先行であることも浮き彫りになった。
これまでにない次元で緩和策を拡大し、政府が財政出動を強化していけば、望むと望まざるとに関わらず、日銀による財政ファイナンスを進めることになってしまう。結局のところ、従来のように量的緩和策を小出しにしていくか、政府の国債発行を縮小するしかそれを避ける方法はない。
黒田氏はもちろんこのことをよく理解している。現在の日本で本当に異次元の量的緩和を行えば大変危険であることは承知したうえで、それを行わず市場に対するイメージだけで、緩和策に似た効果を出すことができるかを考えているはずである。
市場では日銀の新体制によって一気にインフレが進行し、物価上昇と国債価格の下落を制御できなくなる可能性を指摘する声もあるが、黒田氏はあまり心配していないだろう。
発言の大胆さから皆、そのことを忘れているが、黒田氏は主流派ではないにせよれっきとした財務官僚である。財務官僚のほとんどは増税によって財政を均衡させる財政均衡論者である。
もしインフレが急激に進行したり、国債価格が暴落するようなら、というよりもそうならないように、財務省は今後、矢継ぎ早にあらゆる増税策を繰り出してくるだろう。現在の財政が持続不可能という黒田氏の発言は、むしろこれから訪れる大増税時代の地ならしであり、財務省の意向を受けたものと考えた方がよいだろう。
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