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米国の歯科医院でAIDS感染が発覚。日本の衛生基準はどうなのか?

 

 米国オクラホマ州で、不衛生な状態で運営されていた歯科クリニックの患者が、C型肝炎とエイズに感染するという事故があり、同クリニックで治療を受けていた7000人に対して、検査を受けるよう通知を出す騒ぎとなっている。

 問題の歯科クリニックはオクラホマ州のタルサという町にあり、地元で36年間も開業しているベテラン医師だという。
 クリニックに通う患者が、他にまったく原因がないにも関わらずエイズに感染したことから、クリニックの問題が発覚した。報告を受けたCDC(米国疾病管理予防センター)の担当官が同クリニックを検査したところ、治療に使う器具が錆びており、十分に減菌処理ができない状態となっていたほか、20年も前の薬品を使用するなど、衛生管理に著しい問題があったという。

 クリニックの医師は現在、コンタクトが取れない状態にあるといい、クリニックは閉鎖されている。CDCは7000人の患者に通知を送っているものの、2007年以前の患者情報がクリニックに存在していないことから、感染実態を完全に把握するのは不可能だという。

 肝炎やエイズの感染ルートとしてもっとも危険性が高いのが血液を介した感染である。歯科クリニックの処置では、日常的に出血があり、これらに感染する危険性が非常に高い。このため、器具の処置や医師、衛生士に対しては感染防止のガイドラインが定められている。

 米国は世界でもっとも厳しい感染ガイドラインが定められていることで知られているが、それでもこのような事故が発生している。だが、日本の歯科クリニックにおける基準は、アメリカよりもずっと緩く、場合によってはアジア各国の基準よりも緩いという事実はあまり知られていない。

 日本では素手で治療する歯科医も多かったが、米国では患者ごとに手袋を交換するのが当たり前である。また患者ごとに滅菌処理された密封袋から器具を取り出して治療にあたるクリニックも多いが、日本ではあまり見かけない。
 もちろん日本でも、標準的な衛生管理をしていれば、こういった感染症に感染するリスクは非常に少ない。だが米国やアジアの先進的なクリニックよりも、緩い基準で管理しているクリニックが多いのも事実なのである。
 こういった実態を知る人の中には、日本のクリニックを避け、旅行がてら、アジアの先進的な歯科クリニックに治療に行く人もいるくらいだ。

 日本の衛生基準が緩いのには理由がある。日本では歯科治療のほとんどが保険でカバーされており、診療報酬に上限がある。米国並みの厳しい衛生基準を課すと、歯科クリニックの経営が成り立たないのだ。

 米国では、国民皆保険制度がないので、歯の治療は高くつく。従業員に対する福利厚生で歯の治療費を保障するという条件をよく見かけるのもそのような理由からだ。
 アジアは物価水準が安いので、余裕のある日本人から見れば支払い可能な額だが、すべて自腹であることには変わりない。しかも今後は持続的な円安になる可能性が高く、アジアでの治療も高額になってくるだろう。

 エイズや肝炎に感染するリスクはゼロではないが、皆が安く歯医者に行ける社会がよいのか、ある程度のコストは払った上で、そのような感染リスクを完全に排除した方がよいのか。
 従来の保険制度は、日本が発展途上国であることを前提としたものであり、これに類似した事例は歯科クリニックに限らず、日本のあちこちで起こっている。
 日本人はどちらの社会を目指すべきなのか、自らの方向性を決めなければならない時期に差し掛かっているのだ。

 - 社会

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