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銀行取引にさらに煩雑な確認作業が必要に。だが肝心の犯罪防止効果には疑問の声も

 

 犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)が一部改正されるのに伴い、4月1日から銀行取引における各種の確認作業が強化される。

 従来から、銀行窓口では口座開設や一定金額以上の取引に対しては本人確認書類の提出が求められていた。だが4月1日以降は、10万円を超える現金の振り込みや200万円を超える受け払いを行う場合には、従来の本人確認に加えて、職業や取り引きの目的を確認する作業を実施する。
 また法人については、登記簿謄本の提出に加えて、会社の議決権所有者の住所、指名、生年月日の確認なども必要となる。

 振り込め詐欺や犯罪で得た収益のやり取りを防ぐことが目的だが、この施策の実効性にはいろいろと疑問が残る。
 職業や取引目的を確認するといっても、まさか自分から犯罪者ですと名乗り出る人物がいるわけがない。もし本当の犯罪者であれば、そういった手続き的な条件はクリアできるように周到に準備をしておくはずである。このような網に引っ掛かるのは、言葉は悪いが大した犯罪者ではない。
 また会社の議決権所有者についても同様である。現在、会社の議決権保有者が誰なのかを公的に証明する手段はない。したがって、問題ある人物が実質的にオーナーの場合には、虚偽の申告をする可能性が高く、それを見破る手段はない。したがって、議決権所有者の確認も、十分な効果を上げることはできないであろう。せいぜい参考情報が蓄積できる程度だ。

 一方、取引に対して確認作業を課すことは明らかに経済活動を停滞させる。最近は現金での取引は減ったが、それでも商売上、現金でのやり取りが必要な人は多い。このように現金取引に多くの制限がかかるようになると、面倒なので取引自体をやめてしまうという動きにもつながりかねない。
 また確認作業の対象は口座開設にも適用されることから、とりあえず銀行口座を作って起業しようなどという人は銀行でシャットアウトされることになるだろう。こういった動きが蓄積すると、塵も積もれば山となり、日本全体では獏大な経済的な損失となる。

 銀行での度重なる確認作業の追加は、事実上、経済的な犯罪を取り締まることができないので、取引そのものを縮小させようという政策に他ならない。これでは本末転倒であり、犯罪捜査に対する国民の信頼性をも低下させかねない。

 アベノミクスでは物価を2%上昇させるとしている。健全に物価が上昇するためには、取引が活発に行われなければならない。金融機関における取引の過剰な規制は、確実にアベノミクスに対して逆効果を及ぼすことになるだろう。

 - 社会, 経済

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