最高値更新が続く米国株式市場で5月下落説が登場。投資家にとっては悩ましい局面に
市場最高値の更新を続けていた米国株に警戒感が出始めている。4月3日のNY株式市場は111ドル下落して、久々に100ドルを超す大幅安となった。
高値警戒感が出ている最大の理由は、企業の景況感が伸び悩んでいるからだ。
米供給管理協会(ISM)が4月1日に発表した3月の製造業景況指数は51.3と3カ月ぶり低水準となった。
また3月の非製造業景況指数も低下しこちらは7カ月ぶりの低水準となった。歳出の自動削減が徐々に影響を及ぼしている可能性が高い。
ISMの景況指数は米国における景気の重要指標のひとつ。
リーマンショック直後は製造業の方が回復が早かった。だが、2011年以降は欧州景気の低迷などを受けて、非製造業の方が堅調となっており、米国株もサービス業を中心に相場が形成されていた。
グラフを見れば分かるように、2011年以降は景況指数と株価の乖離が激しくなっている。期待先行で株価が過度に上昇しているように見えなくもない。
2013年に入り、製造業の指数が急上昇したことで、市場では景況感と株価の乖離が縮小するとの期待感が強まっていたが、今回の数値でまた元に戻ってしまった格好だ。
一方、こうしたマクロ経済的な要因とは別に、テクニカルな意味で5月には一度相場が崩れると予想する関係者もいる。米国には「5月に株を売ってどこかに逃げろ」という格言があるくらいで、春から初夏にかけては相場が下落しやすい。
もっとも全体としてみれば米国経済は順調であり、長期的な立場の投資家から見れば、もし5月に下落すれば、その時は絶好の買いタイミングであるともいえる。
いずれにせよ、このような局面は投資家にとってもっとも悩ましい状況の一つである。もしここで一度売ってしまうと、大きな下落がなかった場合には、値上がりした株を買い戻さなければならず、心理的な抵抗が極めて大きい。だがここで売却せずに相場が下落してしまえば、せっかく確保したキャピタル・ゲインも水の泡だ。
「相場は懐疑の中で育つ」という格言もある。皆が警戒して躊躇している間に、株価は案外スルスルと上昇してしまうのかもしれない。
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