極度の緊張が続く北朝鮮情勢。だが妥協点を探る動きも出始めた
極度の緊張が続く北朝鮮情勢において、妥協点を探る動きが出始めた。米国防総省は、予定していた戦略核ミサイルの発射実験の延期を決定した。北朝鮮情勢の悪化を受け、偶発的な事態に発展するのを防ぐためとしている。
この発射実験は以前から計画されていたもので、5月を目途に実施する予定であった。
このタイミングで実験中止を明らかにしたことは、北朝鮮に対して交渉のテーブルに着くようにとのサインである可能性が高い。
また正式なものではないが、北朝鮮の金正恩第一書記が、オバマ大統領から電話が欲しいと発言しているという情報もある。
実際、3月に北朝鮮を訪問し金正恩第1書記と会談した全米プロバスケットボール(NBA)の元スター選手デニス・ロッドマン氏が、同様のメッセージを金第一書記から託されてたことも明らかになっている。
北朝鮮政府は各国の大使館に撤退するよう勧告しているが、実際に撤退をはじめた大使館はない。また平壌市内は現在、美化運動の真っ最中で、市民が道路脇に花を植えているという。こうした一連の動きも、妥協点の模索が始まっているという見方を裏付けるものと考えられている。
もっとも表面的には北朝鮮と米韓の緊張状態は極限レベルにある。北朝鮮は中距離ミサイル「ムスダン」を日本海側に移動しており、予告なしの発射を行う可能性が高いといわれている。また豊渓里の核実験場では4度目の核実験を準備する動きも見られる。
米国の報道では、今回の北朝鮮問題をキューバ危機になぞらえたものもの多い。キューバ危機の際には、事態がエスカレートすることを懸念し、最初に拳を下ろしたのはフルシチョフ(旧ソ連側)であった。もし米国の実験延期が交渉開始のサインなのだとすると、今回は米国から先に妥協の余地があることを示したことになる。
ホワイトハウスや国務省などは、表面上は北朝鮮と水面下で交渉することはあり得ないというスタンスだが、実際には、何らかの接触があるとの噂も根強い。そうなると、ロッドマン選手の訪問も、米朝交渉と深く関係していた可能性も高くなってくる(本誌記事「金正恩氏とバスケ観戦したロッドマン元選手の前にコカコーラが置いてあったワケ」参照)。
金正恩第一書記は、米国に対して体制維持の保証を最優先に求めているといわれる。もしそうなのだとすると、一連の緊張関係の高まりは、条件を安売りしたくない米国側がむしろ煽っていたということなのかもしれない。そう考えれば、今回米国側から妥協案を示した点も辻褄が合う。
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