ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

迷走が続く日本のエネルギー政策。結局は石炭火力という国際標準に落ち着くのか?

 

 迷走していた日本のエネルギー政策にひとつの方向性が見え始めている。一旦は縮小させた石炭火力を復活させる動きが拡大しているのだ。

 震災以降、全国の原子力発電所が事実上の全面停止に追い込まれたことから、石油や天然ガスの輸入が急増、日本の貿易収支は急激に悪化した。また相次ぐ電気料金の値上げによって、産業界の一部からは悲鳴の声が上がっている。

 これを受けて経済界ではなりふり構わぬロビー活動を行っており、経団連の米倉会長は4月15日、石炭火力の環境基準緩和と原発の再稼働を石原伸晃環境相に直接要請した。
 石原氏は、石炭火力について 「温暖化ガス対策はしっかり考えないといけない」として一定の留保を示したものの、基本的には前向きに検討する考えを明らかにした。また原発についても再稼働に前向きな考えを示している。

 原発は再稼働に向けて動き始めているが先行きは不透明なままだ。原子力規制委員会は4月10日、原子力発電所の新規制基準案を了承し、新規制が施行される7月以降、新しい基準を満たした原発の再稼働審査を開始する予定となっている。
 新規制基準案は、基本的には従来の規制内容を厳しくしただけであり、事実上、原発の再稼働を容認する内容となっている。ただ、新基準を満たすためには、かなりの追加設備が必要となり、原発コストの大幅な引き上げにつながってくる可能性が高い。

 とにかく原発を再稼働させたい国と電力会社は、原子力政策の抜本的な見直しは絶対に受け入れたくない。一方で原発に対する激しい批判は避けたいという政治的意向は強く、結果的に、従来基準を踏襲し、基準値を厳しくするという玉虫色の着地点となった。

 だがこのような決断は往々にして中途半端な結果を招く可能性が高い。原発に対する根本的な不信感はぬぐえず、一方、原発のコストは跳ね上がる。

 結局のところ石炭火力の増設で当面のエネルギー需要をカバーするという可能性が高くなってきている。石炭はCO2の発生量が多いという問題はあるものの、実は世界でもっともポピュラーな発電用エネルギー源である。石炭火力を捨ててしまったのは日本だけであり、世界ではいまだに石炭火力が主流なのだ(本誌記事「政府が石炭火力の増設に政策転換。今まで日本がダマされていたことが明らかに」参照)。

 石炭価格は低く安定しており、石油や天然ガスのような地政学的なリスクが少ない。石炭火力増設に関する基準作りは最終局面を迎えており、予定通り規制が緩和されれば、石炭火力の普及に弾みが付くことになるだろう。

 これまで日本は、温暖化ガス削減という国際交渉に翻弄され続けてきた。一方諸外国は、温暖化ガス削減を主張しながら、石炭火力を維持し安価なエネルギー源を確保している。温暖化ガス削減の掛け声を額面通りに受け取っていたのは日本だけだったのである。
 度重なる迷走の末、結局日本も石炭火力として標準的なエネルギー政策を採用する結果になるのかもしれない。ただしそれは、戦略的な選択ではなく、結果論にすぎないのだが。

 - 政治, 経済

  関連記事

seifusenyouki
安倍首相が米国訪問に出発。日本側だけが大はしゃぎで米国側は無関心

 安倍首相は21日夕方、オバマ大統領との首脳会談を行うため、政府専用機で首都ワシ …

businessman02
このところ顕著になっている人手不足は景気拡大によるものなのか?

 このところ人手不足がより顕著になっている。人手不足は景気が良くなっている証拠と …

ieren03
FRBが予定通り追加利上げを決断。内容は想像以上にタカ派で、すでに金融引き締めに転換?

 大方の予想通り、FRB(連邦準備制度理事会)が追加利上げを決定した。ただ内容は …

senkaku
中国の外交文書が尖閣は日本領土と記載。だが本質はそんなところにあるのではない

 中国が領有権を主張している尖閣諸島について、領有権を主張する中国側の根拠が揺ら …

chinagdp201510
中国の7~9月期GDPは6.9%増と微妙な数字。今後は消費動向が重要に

 中国国家統計局は2015年10月19日、2015年7~9月期のGDP(国内総生 …

sugaku
文系入試にも数学必須に?だが理系冷遇の風潮を改善しない限りモノづくりは復活しない

 自民党の教育再生実行本部が、文系を含むすべての大学入試で理数科目を必須とするこ …

kouki9
トルコによる中国製装備の調達問題で浮上した、軍事技術汎用化という課題

 NATO(北大西洋条約機構)のラスムセン事務総長は10月7日、NATO加盟国の …

tenanmon
中国が2012年GDP値を発表。中国の爆発的成長は終了し、今後は普通の経済成長へ

 中国国家統計局は18日、2012年のGDP(国内総生産)を発表した。実質GDP …

namapo
生活保護が4月から減額の可能性。だが実態はただのスタンドプレーで根本解決にはならず

 生活保護の給付が来年4月から減額される可能性が高まってきた。田村憲久厚生労働相 …

senkaku
民主、自民、維新3党の領土問題へのスタンスを比較してみると?

 維新の会への太陽党の合流が決まり、いわゆる第三極勢力はある程度まとまった勢力と …