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日本の軍事費は世界第5位に。だが自衛隊の「質」はどの程度なのか?

 

 スウェーデンのシンクタンク・ストックホルム国際平和研究所は4月15日、世界の軍事費に関する報告書を発表した。2012年における世界全体の軍事費は1998年以降はじめて減少に転じた。米国や欧州の軍事費削減がその主な理由。一方でロシアや中国の軍事費は増加が続いている。

 2012年における世界全体の軍事費は1兆7500億ドル(約173兆円)で前年から0.5%減少した。アフガニスタンからの撤退によって、米国や欧州各国の軍事費が大幅に削減されたことが大きく影響した。

 一方、中国の軍事支出は7.8%増、ロシアは16%増、中東地域は8.4%増となっている。インドやブラジルなどその他の主要新興国も軍事費を減らしていることを考えると、中国、ロシアの増加は突出している。

 軍事費がもっとも多かったのは当然のことながら米国で、前年比6%減とはいえ6820億ドル(約67兆円)の支出がある。2位は中国で1660億ドル(約16兆円)、3位はロシア907億ドル(約8.9兆円) 、日本は第5位で、4位の英国とほぼ同額の600億ドル(5.9兆円)を支出している。昨年は6位だったので、ひとつ順位を上げたことになる。

 GDP比で見ると、米国は4.4%、中国2.0%、ロシアは4.4%、日本は1.0%となっている。日本はかつて、アジア各国への配慮から防衛費1%枠という政策を採用しており、中曽根内閣で撤廃された後も、防衛費はおおよそ1%の範囲内で推移してきた。ランキングに掲載されている15カ国の中ではGDPに占める割合はもっとも低く、相対的に見れば、日本は軍事費にあまりお金をかけていない。

 国内では、防衛費のGDP比が諸外国より低いことや、中国、韓国による脅威が増していることから、防衛費の増額を求める声がある。実際、安倍政権では防衛費を増額している。一方、日本の危機的な財政状況やイデオロギー的な観点から増額に難色を示す向きもある。

 だがこれまでの防衛費に関する議論には重要な点が抜け落ちている。それは日本の防衛力の「質」に関する問題である。

 日本とほぼ同レベルの支出を行っている英国は、現在軍事費の削減を進めている最中である。だがその内容をよく見てみると、兵員数の削減が著しいことが分かる。1960年代に30万人を超えていた英国軍兵士は現在では約10万人、2015年には8万人にまで減少する見込みである。
 これに対して日本の自衛隊員の数は1960年代から約27万人とほとんど変わっていない。しかも防衛費の増額にあわせて防衛省は自衛官の増員も求めている。

 確かに英国や米国は軍事費を削減しているが、それはそのまま戦闘能力の低下を意味しているわけではない。現代の軍隊はハイテク化が想像以上のスピードで進んでおり、同じオペレーションを以前よりもはるかに少ない人数で実行できるようになってきている。つまり諸外国の軍隊はハイテク化と軍隊のスリム化を進めているのだ。

 一方、日本の自衛隊における人件費比率はほとんど変わっていない。人員をさらに増やせば人件費比率が上昇する可能性すらある。日本の自衛隊は下手をすると、ローテクでメタボな中高年体質になっている可能性があるのだ。

 日本は戦前にも軍隊の近代化に失敗した過去がある。兵員の数を減らし、近代装備に体質転換しようとしたが、職を失うことを恐れた軍人の反発が強く、思うような改革ができなかった。これが最終的には太平洋戦争の戦い方にも大きく影響してくる(宇垣軍縮)。

 防衛費は金額だけを議論してもあまり意味がない。量よりも質の問題がより重要なのである。

 - 政治, 経済

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