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ITが仕事を奪うとの書籍が話題に。だが現実のIT化はもっとイヤラシイかもしれない

 

 コンピュータによって人々の仕事が奪われ、最終的にはごく一部の知的エリートと、肉体的労働に二極化される。そんな未来を描いた書籍「機械との競争」が話題になっている。
 もともとは2011年に米国で自費出版されたもので、内容自体はそれほど目新しいものではないが、翻訳版が2月に発売されたことから、国内でも知られるようになってきた。

 著者はMITスローン・スクールの研究者2人。 著者はリーマン・ショック後、経済危機を脱しても雇用が回復しないのは、技術の進歩に人間が負け始めているからだと主張する。現代におけるITの進歩はめざましく、自動車の運転もほぼ実用段階に達している。今後は思いもしなかった分野にまでITが進出し雇用を奪っていくかもしれない。

 本書に限らず、テクノロジーの進化が社会を変えるという話にはセンセーショナルな表現がつきものである。現実には、ごく一部の知的エリートと肉体労働者に完全に分断されてしまうことなど、おそらくないだろう。だが、そうだからといってテクノロジーが職を奪うという表現は大袈裟かというと決してそんなことはない。

 米国は80年代後半以降、リーマンショックを引き起こすまで、目覚ましい経済成長を実現した。だがその間、一部の期間を除いて、実質賃金は低下する一方であった。この時代はまさにITの普及が急激に進んだ時期であり、徐々にではあるが、テクノロジーが労働者から富を奪っていったのである。

 つまり、労働者のテクノロジーに対する敗北は連続的に発生するのだ。多くの人が気付かないうちにジワジワと労働者の生活を蝕んでいく。だが皮肉なことに、米国の株式市場のパフォーマンスはこの時代が歴史的にも最高水準であり、多くの庶民が年金増額などを通じてその恩恵を受けることができた。テクノロジーの進歩と金融資本主義の発達は密接に関係している。テクノロジーによる合理化を米国の労働者は資本市場を通じて相殺した格好だ。

 ひるがえって日本はどうか?日本は金融システムの構造上、株高の恩恵を庶民が受けることができない仕組みになっている。もし日本でもIT化が米国レベルまで進んでしまったら、労働者は失う一方になってしまう。日本人の多くが構造改革や規制緩和、ベンチャービジネスに対して警戒心を持っているのは、この仕組みを本能的に知っているからなのかもしれない。

 - 社会, 経済, IT・科学

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